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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第39偈)
敵意ある者どもの間にあって敵意なく、
暴力を用いる者どもの間にあってやすらいでいて、
生ける者どものために同情する人、かれをわれは〈バラモン〉と呼ぶ。
🔍 逐語訳(意訳)
- 敵意ある者たちの中にいても、みずからは敵意を持たず、
- 暴力をふるう者たちの中にいても、やすらぎを保ち、
- すべての生きものに対して同情(慈しみ)をもって接する――
そのような人を、仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。
🧘♂️ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
敵意(ドヴェーシャ) | 怒り、憎しみ、報復心など。他者に向けられる心の毒。 |
暴力(ヒンサー) | 身体的・言語的・心理的あらゆる攻撃性を含む。 |
やすらぎ(シャーンティ) | 外界に動じない平穏な心の状態。平和・静寂・忍耐の意。 |
同情(カルナー) | 他者の苦しみに寄り添い、助けたいという心=仏教の慈悲の実践。 |
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
怒りと対立が渦巻く場にあっても、
自らは敵意をもたず、
暴力と破壊が支配する中にあっても、
静かに心の平和を保ち、
すべての生きものに慈しみをもって接する人こそ、
仏陀のいう〈バラモン〉である。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、「外の世界が荒れていても、自分の心を穏やかに保つ力」こそが本物の尊さであると説いています。
敵意の応酬ではなく、あえて敵意を手放す勇気と、暴力に流されない精神的自律。
そしてその根底にあるのは、「生きものすべてを思いやる心」です。
現代社会においても、対立・競争・暴力的な言動に囲まれることは少なくありません。
しかし、そうした中でなお、冷静さ・穏やかさ・思いやりを失わない人物が、真の尊敬を集めるのです。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
対立の中での冷静なリーダーシップ | 感情的な議論や社内対立でも、沈着に話を聞き、解決へと導く態度。 |
暴力的な言葉に屈しない精神力 | ハラスメントや理不尽な言動に対しても、自らは暴力的反応に陥らず、毅然とした態度をとる。 |
共感力に基づくマネジメント | 部下の感情や苦しみに寄り添い、信頼される上司としてチームを支える。 |
非暴力的な企業文化の創造 | 攻撃的・高圧的な文化ではなく、思いやりと尊重に基づく職場環境づくり。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「敵意を持たぬ勇気、暴力に流されぬ静けさ」
荒れた環境にあっても怒らず、
暴力のただなかでも穏やかに、
すべての命を慈しむ――
そんな心の人こそが、真の尊者であり、
仏陀が説く〈バラモン〉なのである。
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