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偽りの力を抑えてこそ、本当の心があらわれる

自分を誇って他人を見下すような心は、自分自身の力から生まれたものではなく、
他から借りた「客気」、つまり偽りの空元気にすぎない。
この客気をしっかりと抑えることができてはじめて、
本来の「正気」――自分の内面から湧き上がる真の勇気と気力が伸びてくる。
また、さまざまな情欲や損得づくの打算はすべて「妄心」から生まれる迷いであり、
それらを完全に消し去ることができれば、そこにこそ「真心」――本当の自己の心が現れる。
偽りを抑え、迷いを断ち、初めて本来の自分と向き合えるのだ。


「矜高倨傲(きょうこうきょごう)は、客気(かっき)に非(あら)ざるは無し。
客気を降伏(こうふく)し得(う)下(くだ)して、而(しか)る後(のち)に正気(せいき)伸(の)ぶ。
情欲意識(じょうよくいしき)は尽(ことごと)く妄心(もうしん)に属(ぞく)す。
妄心を消殺(しょうさつ)し得(う)尽(つ)くして、而る後に真心(しんしん)現(あら)わる。」


注釈:

  • 矜高倨傲(きょうこうきょごう)…自らを誇って驕り高ぶり、他人を見下す心。自負心や傲慢。
  • 客気(かっき)…自分のものではない外から借りた元気。虚勢や空元気。
  • 正気(せいき)…内面から自然に湧き出る本来の気力や勇気。真に力のある姿。
  • 妄心(もうしん)…迷いの心。妄想や煩悩、打算など本質から離れた思考。
  • 消殺(しょうさつ)…完全に断ち切る、消し去ること。
  • 真心(しんしん)…純粋で偽りのない本当の自分の心。道にかなった誠の心。

1. 原文:

矜高倨傲、無非客氣。
降伏得客氣下、而後正氣伸。
情欲意識、盡屬妄心。
殺得妄心盡、而後眞心現。


2. 書き下し文:

矜高倨傲(きんこうきょごう)は、客気(かくき)に非(あら)ざるは無し。
客気を降伏し得て下し、而(しか)る後に正気(せいき)は伸ぶ。
情欲意識(じょうよくいしき)は尽(ことごと)く妄心(もうしん)に属す。
妄心を殺(しょう)して尽くし得て、而る後に真心(しんしん)現る。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ):

  • 「矜高倨傲は、客気に非ざるは無し」
     → 自尊心の高さや、傲慢さ、見下す態度などは、すべて一時的な“外側の気分”にすぎない。
  • 「客気を降伏し得て下し、而る後に正気は伸ぶ」
     → そうした外的で偽りの気分を抑え込んでこそ、本来の正しい精神が発揮される。
  • 「情欲意識は尽く妄心に属す」
     → 欲望や妄想、自己中心的な思考はすべて偽りの心(妄心)に由来する。
  • 「妄心を殺して尽くし得て、而る後に真心現る」
     → この妄心を完全に消し去ることができてはじめて、本当の誠実な心が現れてくる。

4. 用語解説:

  • 矜高倨傲(きんこうきょごう):うぬぼれ、傲慢さ、他人を見下す態度。
  • 客気(かくき):外から一時的に生じる気分、感情。真の自己に根差していない「外気」。
  • 正気(せいき):正しい精神状態、健やかで誠実な内なる力。
  • 情欲意識(じょうよくいしき):感情的な欲望や、妄想、執着を伴う心。
  • 妄心(もうしん):真実から離れた心、虚構に支配された心。
  • 殺(しょう)して尽くす:ここでは「徹底して取り除く、滅する」の意。
  • 真心(しんしん):偽りのない、純粋で誠実な心。人間の本質的な良心・内面の道理。

5. 全体の現代語訳(まとめ):

うぬぼれや傲慢さといった態度は、すべて一時的で偽りの心によるものである。
それらを抑え込んではじめて、人としての本当の誠実な気持ちが現れてくる。
また、欲望や自己中心的な意識は、すべて妄想に支配された心から生まれる。
その妄心を徹底して取り除いてこそ、本来の純粋で誠実な「真心」が現れるのである。


6. 解釈と現代的意義:

この章句は、**「傲慢や欲望に支配されているとき、人は自分を見失っている」**という、精神的修養の核心を突く教えです。

表面的な気分(=客気)に流されず、それを乗り越えることで初めて、本来の誠実な人格(=正気)が現れます。
さらに、感情や欲望に支配された心(=妄心)を取り除くことで、人は本当の意味で落ち着き、清らかさ、謙虚さを取り戻せるのです。

これは、仏教や儒教における「自己浄化」の考え方とも共通し、現代においては心のマネジメント、エゴの抑制、精神的成熟の教えとして極めて有効です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き):

  • 「成果や肩書きが“傲慢”を生むが、それは一時的な幻想」
     成果に酔い、自分を過大評価する態度は、外からの気分にすぎない。
     それを抑えてこそ、本当の実力者としての信頼が築かれる。
  • 「感情・欲望ベースの判断をしてはならない」
     怒りや焦り、自己保身といった妄心に基づく行動は、誤判断や信頼の損失を招く。
     冷静に内省し、“真心=信頼と調和を生む心”から行動を選ぶべき。
  • 「リーダーは“正気”で人を導く」
     謙虚さと誠実さを持ち、自我に流されない態度こそが、周囲を安心させるリーダーの資質である。

8. ビジネス用の心得タイトル:

「傲慢を抑え、妄心を消せ──“真心”こそ信頼の源」


この章句は、人の内面の強さと誠実さは、表面的な感情を抑え、静かに培われるという根本的な精神修養を示しています。

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