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■引用原文(日本語訳)
一一 博学であって、徳行をたもち、明らかな知慧があり、
つねに心が安定し統一している人は、ジャンブー河から得られる黄金でつくった金貨のようなものである。
その人を誰が非難し得るであろうか?
――『ダンマパダ』 第二二章 第十一節
■逐語訳
- 博学であって:広く深い学びを備えており、知識に富む。
- 徳行をたもち:誠実で正しい行動を継続的に実践している。
- 明らかな知慧があり:単なる知識にとどまらず、本質を見抜く智慧を有する。
- 心が統一されている:瞑想や内観によって、心が乱れず静かで整っている。
- ジャンブー河の黄金の金貨:純度が高く、価値ある理想的な存在のたとえ。
- 誰が非難し得ようか?:これほど完成された人物に対して、非難など成り立たないという強い肯定。
■用語解説
- ジャンブー河(ジャンブナーダー):インド神話・仏教で「純金が採れる」とされる理想郷の川。最高の価値の象徴。
- 黄金の金貨(スヴァンナ・ムッダ):純粋・価値・安定・永続性を意味する。人格完成者の象徴。
- 明らかな知慧(パンニャー):知識を超えた深い洞察力。智慧は見る・捉える力を含む。
- 心の統一(エーカッガター):散乱せず、集中し、ブレのない心の状態。サマーディの境地。
■全体の現代語訳(まとめ)
ある人が、深い学びを持ち、行いも正しく、
しかも本質を見抜く智慧があり、常に心が静かに整っているならば、
その人はまるで、ジャンブー河から採れた純金でできた金貨のような尊い存在である。
そのような人を、いったい誰が非難できようか――と仏陀は讃える。
■解釈と現代的意義
この節は、「知」「行」「智」「心」の四要素を統合した人格像を示しています。
それは単なる優等生や博識者ではなく、生き方・思考・精神の統合された“完成された人間”です。
そして仏陀は、そうした人を「黄金の貨幣」のように比類なく価値ある存在と讃えています。
現代においても、知識と行動だけでなく、深い洞察と心の安定を備えた人物は、
周囲に安心感と信頼を与えるリーダーシップの象徴です。
■ビジネスにおける解釈と適用
要素 | 現代ビジネスでの価値 |
---|---|
博学(知識) | 専門性・分野知識・論理的思考。意思決定や提案の根拠を形成。 |
徳行(行動) | 信頼・誠実・責任感ある振る舞い。信頼される人物像の基礎。 |
知慧(洞察) | 数値や情報にとどまらない「先を読む力」「本質を見抜く力」。戦略立案・判断力に直結。 |
心の統一 | 感情に流されず、安定し冷静に判断できるリーダーシップとマインドフルネス。 |
■心得まとめ
「学び、行い、智慧、心――四つが統一されたとき、人は黄金のように輝く」
この詩句は、知識だけでは足りず、行動だけでも足りず、
さらに洞察力と安定した心を持って初めて、「誰もが認める完成された人間」となれると教えています。
そしてそうした人物は、黙っていても周囲が称え、非難されることなく信頼される。
まさに仏教的人格完成像としての理想です。
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