目次
🔖 原文(日本語訳)
「怨みをいだいている人々のあいだにあって、われらはひとを怨むこと無く、いとも楽しく生きて行こう。
怨みをもっている人々のあいだにあって、われらは怨むこと無く暮そう。」
――『ダンマパダ』第5章「愉楽品」第47偈
📝 逐語訳と要点解説
- 怨みを抱く人々(veri):過去の不満や対立、怒りにとらわれ、それを手放せずにいる人々。
- 怨まずに(avera):敵意や仕返しの心をもたず、慈悲と寛容に基づいた精神。
- 楽しく生きる(sukhaṁ jīve):平穏で自由な心をもって日々を過ごすこと。
🧩 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
怨み(vera/veri) | 相手への敵意、復讐心、ねたみなど、心を内側から蝕む負の感情。 |
怨まずに暮らす(avera jīve) | 怨みを持たないことで心の自由を得る生き方。 |
楽しく(sukhaṁ) | 単なる娯楽ではなく、内なる満足と調和の状態。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
怒りや憎しみが満ちているこの世界にあっても、
私たちは誰も怨むことなく、
穏やかに、楽しく生きてゆける。
他人の怨みに心を染めることなく、
自らの心の平和を守る――
それが、真に賢明で強い生き方である。
💡 解釈と現代的意義
この偈は、「怒りは怒りによっては消えない」という仏教の基本理念を具現化した言葉です。
- 「あの人がこうしたから、私も怒る/憎む」
→ それでは、相手と同じ次元にとどまることになる。 - 怨みに対して、怨みで返すことなく、慈しみと理解で応じることが、
最も深い強さであり、真の幸福につながる。
このような態度は、個人の精神衛生はもちろん、
家庭・職場・社会の平和にも大きく貢献します。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
対人関係 | 上司や同僚との軋轢があっても、怒りを持続せず、感情を手放すことで良好な関係再構築が可能になる。 |
クレーム対応 | 顧客からの攻撃的な言動にも、怨まずに対応できるスタッフは、最も信頼される。 |
交渉や競争 | 他者から理不尽に扱われても、憎まず冷静に対応することで、結果として優位なポジションを得ることができる。 |
リーダーシップ | 部下の過ちや裏切りにも、怒りではなく寛容さで接するリーダーは、長期的な信頼を獲得する。 |
✅ 心得まとめ
「怨みによって、怨みは消えない。慈しみによってこそ、怨みは終わる」
――『ダンマパダ』第1章第5偈の精神と共鳴
怒りを捨てるには、力がいる。
怨みを超えるには、智慧と慈悲が要る。
だがそれこそが、心の自由と安楽をもたらす道である。
私たちが世界の中で真に楽しく生きるためには、
まず「誰も怨まない」という選択を、自らの内側で下すことが不可欠です。
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