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傷つけぬ心に、真のやすらぎが宿る


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■引用原文(『ダンマパダ』第二一章 第三〇〇偈)

ゴータマの弟子は、いつもよく覚醒していて、その心は昼も夜も不傷害を楽しんでいる。
――『ダンマパダ』 第二一章 第三〇〇偈


■逐語訳(一文ずつ訳す)

  • 「ゴータマの弟子は」
     ――釈尊(ゴータマ・ブッダ)の教えに従う修行者は、
  • 「いつもよく覚醒していて」
     ――常に目覚めた気づきの意識を持ち、無自覚な衝動に流されることがない。
  • 「その心は昼も夜も不傷害を楽しんでいる」
     ――日夜を問わず、他者を害さないことに心の平安を感じ、非暴力と慈悲に安らぎを見出している。

■用語解説

  • 不傷害(アヒンサー, ahiṁsā)
     他者に対して暴力をふるわない、傷つけない態度。言葉、行動、思考において「傷を与えない」ことを意味する。仏教・ジャイナ教・ヒンドゥー教に共通する重要な徳。
  • 楽しむ(ラーマ)
     単に「快楽を得る」意味ではなく、「深い満足感・心地よさ・安定を見出す」こと。すなわち、非暴力の中に精神的安定を感じる状態
  • 覚醒(アパマーダ)
     慢心・怒り・欲望などに流されず、注意深く行動する目覚めた精神状態。

■全体の現代語訳(まとめ)

仏弟子とは、日々目覚めた意識で生きながら、他者を傷つけない心の状態を保ち、その優しさと穏やかさの中に深い喜びを見出す存在である。暴力や敵意を楽しむのではなく、「害さぬこと」を喜びとする生き方こそ、真に清らかな人生の基盤となる。


■解釈と現代的意義

この偈は、外的な行動だけでなく、「心の奥にある暴力性や加害性の種子」に気づき、それを手放すことの大切さを説いています。
現代では物理的な暴力よりも、

  • 言葉による傷つけ
  • SNSでの誹謗中傷
  • 無意識の支配・操作
  • 内心での苛立ちや軽視

など、**見えにくい「心の暴力」**が蔓延しやすい時代です。

だからこそ、他者を害さないだけでなく、「他者の幸福を願い、傷つけぬことを喜びとする心の態度」が、現代的な仏弟子の条件と言えるでしょう。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
非暴力的コミュニケーション批判や命令ではなく、共感と尊重をベースにした対話を心がけることで、チームの信頼と創造性が高まる。
ハラスメントの防止上司・部下を問わず、威圧・無視・皮肉・操作的言動を慎むことで、心理的安全性が確保される。
競争から共創へ相手を「打ち負かす」意識ではなく、「ともに価値を創る」姿勢が、持続的関係と成果を生む。
自己との対話自分自身に対しても過剰な叱責や否定ではなく、励ましと慈しみの心で接することが、長期的な自己成長を支える。

■心得まとめ

「害さぬ者こそ、もっとも静かに強い」

剣を持たぬ者が、弱いのではない。
傷つけぬ者こそ、もっとも深く強いのだ。

怒りに反応せず、嫉妬に負けず、
他者に対し、やさしく、静かに、誠実に接する人――
その人こそが、仏陀の弟子である。


次の偈(三〇一)以降は、「修行者の心の姿勢」や「禁欲と忍耐」へと続いていきます。

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