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本物の静けさ、本物の楽しさは「逆境」の中にこそ現れる

穏やかで静かな環境において、心を静かに保つことができても、
それは状況によって作られた静けさであり、まだ“真の静”とは言えない。
むしろ、喧騒の中でこそ心の静けさを保つことができたとき、
初めてそれは「天性の静けさ」、つまり本性から湧き上がる静かな境地であるといえる。

同様に、快適な環境において何かを楽しめるのは自然なことだが、
困難や苦痛のただ中にあっても、なお心が喜びを見出せるとすれば、
それこそが本当の意味で「心のはたらき」を理解した証である。

静けさも、楽しさも——
それが「静かであるから」「楽だから」感じられるのではなく、
「動の中の静」「苦の中の楽」によってこそ、その本質が現れるのである。


原文とふりがな付き引用

静中(せいちゅう)の静(しず)かは真静(しんせい)に非(あら)ず、動処(どうしょ)に静(しず)かにし得(え)て来(き)たりて、纔(わず)かに是(こ)れ性天(せいてん)の真境(しんきょう)なり。
楽処(らくしょ)の楽(たの)しみは真楽(しんらく)に非ず、苦中(くちゅう)に楽(たの)しみ得来(き)たりて、纔(わず)かに心体(しんたい)の真機(しんき)を見る。


注釈(簡潔に)

  • 真静(しんせい):真に静かな境地。環境に依存しない内面的な静けさ。
  • 動処(どうしょ):動きのある場面。喧騒や忙しさ、混乱など。
  • 性天(せいてん):生まれ持った性(さが)と、天から授かった本性。
  • 真楽(しんらく):真の楽しみ、深い精神的充足。
  • 苦中(くちゅう):苦しみや逆境のただ中。
  • 心体の真機(しんたいのしんき):心の本質が持つ真の働き。その人の内面から自然に出てくる心の力。

パーマリンク案(英語スラッグ)

true-joy-emerges-in-struggle
「本当の喜びは苦の中にこそ生まれる」という核心を端的に表現したスラッグです。

その他の案:

  • stillness-amid-chaos
  • find-light-in-darkness
  • deepest-truths-in-hard-times

この章は、私たちが「心のあり方」を問われるのは、
穏やかで満たされたときではなく、むしろ混乱と苦痛の中にあるときである——という真理を教えています。

苦しみの中でも「楽しみを見出そうとする心」、
忙しさの中でも「静けさを保とうとする心」こそが、
本物の内面の成熟であり、修養の極みであるという、深く実践的な洞察が込められています。

1. 原文

靜中靜非眞靜、動處靜得來、纔是性天之眞境。樂處樂非眞樂、苦中樂得來、纔見心體之眞機。


2. 書き下し文

静中(せいちゅう)の静は真静(しんせい)に非(あら)ず。動処(どうしょ)に静を得来(きた)りて、纔(わず)かに是(こ)れ性天(せいてん)の真境(しんきょう)なり。
楽処(らくしょ)の楽は真楽(しんらく)に非ず。苦中(くちゅう)に楽しみを得来たりて、纔かに心体(しんたい)の真機(しんき)を見(あら)わす。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳す)

  • 靜中靜非眞靜
     → ただ静かな場にいて静かであるのは、本当の静けさではない。
  • 動處靜得來、纔是性天之眞境
     → 騒がしく動いている場面の中で静けさを保ててこそ、それが本来の自然な静けさであり、真の境地である。
  • 樂處樂非眞樂
     → 快適で楽しい状況にある楽しさは、本物の楽しみではない。
  • 苦中樂得來、纔見心體之眞機
     → 苦しい状況の中で楽しみを見出してこそ、心の本質的な働きが現れる。

4. 用語解説

  • 静中の静:静かな環境の中での静けさ(受動的)。
  • 動処の静:活動や混乱の中でも保たれる静けさ(能動的・内的)。
  • 真静(しんせい):本質的・成熟した静けさ。
  • 性天(せいてん):人間の本性・自然の本質。
  • 真境(しんきょう):真の境地、悟りの状態。
  • 楽処の楽:快適な環境の中での享楽的な喜び。
  • 苦中の楽:困難や逆境の中でも見出す精神的な喜び。
  • 心体(しんたい):心そのもの、精神の根本。
  • 真機(しんき):心の真の働き、本質的な作用。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

静かな場所で静かにしているだけでは、本物の静けさとは言えない。
騒がしい場面の中でも心が静かでいられることこそが、人間本来の真の境地である。

同じように、快適な状況で得られる楽しみは本物ではなく、
苦しい状況の中であっても楽しみを見出せたとき、心の本質的な働きが発揮されるのだ。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、「逆境・動乱の中でこそ本質が試される」という教えです。

  • 「平穏の中での静けさ」は環境に依存しており、揺れやすい。
  • 「困難の中でも静かでいられる心」こそが、自律した成熟の証。
  • 同様に、「楽なときの幸福感」は真の満足ではなく、
     「苦しみの中でも笑える心」が、心の鍛えられた証し。

つまり、人の“静”や“楽しみ”の価値は、外的状況ではなく内的成熟にかかっていると説いています。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

▪ 動中の静:混乱・忙しさの中でもブレない判断力

リーダーは、トラブル対応や予期せぬ事態の中でこそ、
**「冷静さ」「沈着さ」「余裕」**を示すことが求められます。
これは日頃の心の訓練によってしか育たない。

▪ 苦中の楽:困難の中にも価値と学びを見出す力

業績が悪い、顧客が厳しい、リソースが足りない──そんな中でも、
メンバーや顧客との対話を楽しむ、改善の喜びを見つける、挑戦を前向きに受け止めることができる人は、周囲に希望を与える。

▪ 外的な「静・楽」に依存しない組織文化

職場環境・待遇・外部評価に依存せず、「内面の価値観・哲学」に基づく行動や満足感を大切にすることで、チームの耐久性と創造性が高まる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「静けさは内から、喜びは逆境から──“本物の力”は試練の中で育つ」


この章句は、どんなに情報過多・外的要因に翻弄される現代においても、
「環境によらず、自分の内面を整える力」こそが真の成功に通じるという普遍の真理を語っています。


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