目次
🔖 原文(日本語訳)
「かれらは楽しく食物を味わい、法衣を身につけている。
山の中でも藪の中でも、かれらのそぞろあるき(経行)は楽しい。」
――『ダンマパダ』第1章「双句品」第16偈
📝 逐語訳
- かれら:ここでは主に出家修行者(比丘)を指すが、真理に目覚めたすべての人に通じる。
- 楽しく食物を味わい:質素な食事であっても、感謝と心の落ち着きの中で、それを味わう喜びがある。
- 法衣を身につけている:最低限の衣(僧衣)を着て、無駄な装飾を持たない清らかな生活。
- 山の中でも藪の中でも:人里離れた自然の中に暮らしていても、その孤独を苦ではなく楽しんでいる。
- そぞろあるき(経行)は楽しい:行ったり来たりの歩行瞑想(経行)そのものが心を澄ませる喜びとなっている。
🧩 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
食物を味わう | 精進料理のような質素な食事を、感謝と平静の心で受け入れること。 |
法衣(ほうえ) | 仏教僧が身につける衣。執着を離れ、簡素でありながら清浄の象徴。 |
経行(きんひん) | 歩行しながら心を整える修行法。坐禅と並ぶ基本的な瞑想実践。 |
山や藪の中 | 世俗を離れた環境。物質的には不便でも、精神的には豊かな場。 |
🌐 全体の現代語訳(まとめ)
彼ら(修行者)は、質素な食事を感謝の心で楽しみ、必要最低限の衣をまとっている。
自然の中、誰もいない山や藪の中にあっても、その歩み(経行)は静けさとともに満ち足りた喜びとなっている。
外的な豊かさに頼らずとも、内面の充足によって人生は豊かになり得るという、深いメッセージが込められている。
💡 解釈と現代的意義
この章句は、「足るを知る生活」こそが最大の幸福であるという、仏教の重要な教えを端的に表しています。
現代では、便利さや物の多さに囲まれていながら「満たされない」と感じる人が多い中で、
この偈は、物質を離れ、自然とともに、今あるものを味わう生活こそが本当の豊かさであると教えてくれます。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
マインドフルネス | 食事や歩行など、日常の動作を丁寧に味わうことで、心の安定と集中力を取り戻せる。 |
ミニマルな思考 | 多くを持つよりも、「必要なものだけに集中する」シンプルな働き方が、逆に創造性を高める。 |
働き方の再構築 | 静けさや自然の中でのリモートワーク、リトリート的な働き方に、集中・回復・洞察が宿る。 |
リーダーシップ | 華やかさよりも「落ち着き」と「質素の中の深み」を持つリーダーが、長く尊敬される存在となる。 |
✅ 心得まとめ
「心静かに歩き、ありのままを味わうことが、最高の贅沢である。」
日常の中にある当たり前のこと――食べる、歩く、着る――そのひとつひとつを、
雑念なく、感謝を持って行える人は、すでに仏の境地に近いといえるのかもしれません。
足るを知り、自然と共にある心が、人生をもっとも深く豊かにしてくれるのです。
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