目次
■引用原文(日本語訳)
六
知慧についても、徳行についても、心の静まりについても、最上のすぐれた人々に近づき仕える人は、つねにすぐれた境地に達する。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
知恵(理解力・判断力)においても、
行いの清らかさ(道徳・実践)においても、
心の静けさ(精神の安定と集中)においても、
最上級の者――真に優れた人格者――に近づき、仕える人は、
常に優れた精神的境地へと導かれるものである。
■用語解説
- 知慧(パンニャー):仏教における「智慧」は、単なる知識ではなく、物事の本質を見抜く力。実践的な洞察。
- 徳行(シーラ):正しい行動・誠実な生き方・戒律に従った品格あるふるまい。
- 心の静まり(サマーディ):欲や怒りに揺れず、精神が安定している状態。瞑想による深い集中や内面の平穏。
- すぐれた人々(ウッタマ・プルシャ):人格的・精神的に完成度の高い導師や賢者。
- 仕える(セーヴァ):単に従属するのではなく、謙虚に学び、仕え、奉仕する姿勢を指す。
■全体の現代語訳(まとめ)
本当に優れた人物――知恵があり、行動が正しく、心が穏やかである人に近づき、その教えに学び、仕えることによって、人は必ず優れた状態へと導かれていく。人格を高めたいなら、まずはその理想を体現している人のもとで謙虚に学ぶべきである。
■解釈と現代的意義
この章句は、「学ぶべき人の選び方」と「仕えることの価値」を教えています。
現代では“仕える”という言葉に抵抗があるかもしれませんが、ここで言う“仕える”とは、師を尊敬し、その生き方・言動から謙虚に学ぶ姿勢です。
本物の知恵と品格を備えた人物に出会い、深く学ぶことで、人は自分の限界を超え、精神的な次元を引き上げられるのです。
また、知識・行動・精神の三要素が揃った人物に近づくことが、人格形成の王道であると明言しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
メンターシップ | 実務能力だけでなく、人間力・心の安定を備えた人物のもとで学ぶことで、仕事以上の成長が得られる。 |
部下の育成 | 単なるノウハウより、上司の「人としての姿勢・落ち着き・言動」が、最も深く部下に影響を与える。 |
リーダーシップ | 心が穏やかで、品格と知性を備えたリーダーに人は自然と従い、学び、成長する。 |
組織文化形成 | 「知恵・行動・心の平穏」がある人を中心とした組織は、自然と健全で高い次元に引き上げられる。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「人格は、触れる背中によって形づくられる」
真に賢く、正しく、静かな心を持つ者に近づき、仕え、学ぶことで、自らの人格も自然と高みに導かれる。
だからこそ、知恵と品格を体現した人のそばで学ぶことを、何よりの修行とせよ。
目指す境地は、すでにそれを歩む人の背中に現れている。
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