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本当の孝とは、父の人を用い、父の方針を継ぐことにある

曾子は、孔子から聞いた話として、魯の大夫・孟荘子(もうそうし)の孝行を讃えた。
曰く――孟荘子の孝の中で、一般的な行動は他人も真似できるかもしれない。
しかし、父の側近たちをそのまま登用し、父の政治方針を改めずに継承したことこそが、
「実に難しい孝」なのである。

表面的な孝(礼を尽くす、弔う、供養する)は誰でもできるかもしれない。
だが、父の遺志と信頼をそのまま受け継ぐことは、内面的な敬意と覚悟がなければできない。
ときに自分の考えややり方を抑えてまで、先代の人と道を守る――
そこにこそ、深い孝と謙遜、そして継承の美徳がある。


原文と読み下し

曾子(そうし)曰(い)く、吾(われ)は諸(これ)を夫子(ふうし)に聞(き)けり。孟荘子(もうそうし)の孝(こう)や、其(そ)の他(た)は能(よ)くすべきなり。其の父(ちち)の臣(しん)と父の政(まつりごと)とを改(あらた)めざるは、是(こ)れ能(よ)くし難(がた)きなり。


意味と注釈

  • 孟荘子(もうそうし)
     魯の名家・孟孫氏の当主。父・孟献子(もうけんし)も名臣であった。
     「荘子」は諡号で、生前の徳を称えて贈られた名。
  • 孝や、其の他は能くすべきなり
     一般的な孝行(礼を尽くす、養うなど)は多くの人も真似できる。
  • 父の臣と政とを改めざる
     自分の代になっても、父が用いていた家臣をそのまま信頼し、父の方針・政治を引き継いだこと。
  • 是れ能くし難きなり
     これは非常に難しく、簡単には真似できない高度な孝行である、という評価。

パーマリンク(英語スラッグ)

true-filial-piety-is-continuity

他の候補:

  • honor-through-inheritance
  • loyal-to-fathers-way
  • difficult-but-deep-filial-duty

この章句は、孝行とは単なる儀礼ではなく、父の人間関係や志を尊重し、
それを忠実に受け継ぐという深い責任の表れである
ことを教えています。
現代においても、「組織・思想・信頼の継承」といったリーダーシップの本質に通じる教訓です。

1. 原文

曾子曰、吾聞諸夫子、孟莊子之孝也、其他可能也、其不改父之臣與父之政、是難能也。


2. 書き下し文

曾子(そうし)曰(いわ)く、吾(われ)、諸(これ)を夫子(ふうし)に聞(き)けり。孟荘子(もうそうし)の孝(こう)や、其(そ)の他(た)は能(よ)くすべきなり。其の父(ちち)の臣(しん)と父の政(まつりごと)とを改(あらた)めざるは、是(こ)れ能(よ)くし難(がた)きなり。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 曾子曰く、吾、諸を夫子に聞けり。
     → 曾子は言った。「私はこのことを孔子先生から直接聞いた。」
  • 孟荘子の孝や、其他は能くすべきなり。
     → 「孟荘子の孝行は、外面的な行動は他の人でも実践できるものであるが、」
  • 其の父の臣と父の政とを改めざるは、是れ能くし難きなり。
     → 「父の家臣や政治方針を変更しなかったという点において、彼の孝は非常に実行し難く、優れている。」

4. 用語解説

  • 曾子(そうし):孔子の高弟で、「孝」と「誠」を重視した人物。『大学』の伝承者ともされる。
  • 夫子(ふうし):孔子を指す敬称。
  • 孟荘子(もうそうし):魯の政治家で、父親は孟懿子。息子として父の後を継ぎ、政治を執った人物。
  • 孝(こう):親への敬愛と従順。儒教の根幹をなす徳目。
  • 臣(しん):家臣・側近。
  • 政(まつりごと):政治的な方針や行政のやり方。
  • 改めざる:変えないこと。父の意志を尊重してそのまま引き継ぐ。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

曾子はこう言った:
「私はこのことを孔子先生から聞いた。孟荘子の孝行は、見た目には他の人でも真似できることだった。
しかし、父が仕えていた家臣を引き続き用い、父の政治方針を変えなかった点こそ、実に実践し難く、真に優れた孝である。」


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「本当の孝とは、見た目の行為ではなく、父の意志・遺志をどれだけ尊重するか」**という深い問いを提示しています。

  • 親の“形”だけを守るのではなく、“意志”や“理念”を受け継ぐ姿勢こそが真の孝。
  • また、それは政治や組織運営という公的な場においても表れる。
  • 孟荘子は、父の行っていた政策や人事を変えずにそのまま引き継ぎ、自分の考えよりも父の信頼や実績を優先した。この姿勢は「能くし難き」=非常に実行しづらい孝とされる。

7. ビジネスにおける解釈と適用

✅「先人の志を継承する“真の後継者”たれ」

事業承継や家業継続において、前任者の人脈・価値観・方針を理解し、尊重しながら運営するのは、形式以上に難しい。

✅「自分の改革欲より、信頼関係の継続を選ぶ勇気」

先輩の部下ややり方に不満があっても、それをすぐに変えるのではなく、「引き継ぐ覚悟」が人徳と評価されることがある。

✅「組織の歴史と“人のつながり”を軽視するな」

新しい体制や仕組みを導入する際、過去の信頼関係や文化を一掃することは危険。それを継承しつつ改善するバランスが求められる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「変えるより、継ぐ勇気──志と人を受け継ぐ“真の継承者”たれ」
– 真の後継者とは、成果や制度ではなく、人と志を尊重し継承できる人物である。


この章句は、「孝=継承の精神」を組織的・社会的観点から掘り下げた非常に示唆に富む教えです。
家業継承・事業引継ぎ・役職交代など、現代にも通じるテーマが色濃く込められています。

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