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本物の非凡は自然体にあり、奇をてらえばただの偏屈になる

本当に非凡で優れた人とは、自然に俗世を超越している人である。
しかし、わざと人と違うことをして目立とうとする者は、奇才ではなく、ただの変人にすぎない。

また、世間と関わりながらも、その俗っぽさや汚れに染まらず、心の清らかさを保っている人こそ高潔な人物である。
しかし、人とのつながりをすべて断ち切り、「自分は清らかだ」と装う人は、高潔どころか偏屈である。

つまり、自然体であってこそ本物であり、つくりものの超越や孤高は、かえって浅はかさを露呈するのだ。
まわりに迎合せず、かといって反発するでもなく、自分の軸でしなやかに生きること――そこに真の人格があらわれる。


原文(ふりがな付き)

「能(よ)く俗(ぞく)を脱(だっ)すれば便(すなわ)ち是(こ)れ奇(き)なり。
作意(さくい)に奇(き)を尚(たっと)ぶ者(もの)は、奇(き)と為(な)さずして異(い)と為す。

汚(お)に合(あ)わせざれば便(すなわ)ち是(こ)れ清(せい)なり。
俗(ぞく)を絶(た)ちて清(せい)を求(もと)むる者(もの)は、清(せい)と為(な)さずして激(げき)と為(な)す。」


注釈

  • 奇(き):真に非凡で優れた人物。自然に常人と異なる徳を持つ人。
  • 作意(さくい):わざとらしさ。意図的な態度や振る舞い。
  • 異(い):ただ人と違うだけの存在。変人、奇人。
  • 汚(お):俗世の汚れや煩わしさ。
  • 清(せい):心の清らかさ、高潔。
  • 激(げき):極端で偏った態度。偏屈・孤高を装うこと。

パーマリンク候補(英語スラッグ)

  • true-elegance-is-natural(本物の気高さは自然体にあり)
  • don’t-force-uniqueness(無理に目立とうとするな)
  • pure-but-not-isolated(清らかに、しかし孤立せず)

この条は、「本物」と「見せかけ」の違いを見抜く力を養ううえでも重要な一節です。
自己表現が強く求められる現代においてこそ、「本物は無理をしない」という静かな真理が、心に深く響いてきます。

1. 原文

能脫俗是奇。作意尚奇者、不為奇而為異。
不合汚是清。絕俗求清者、不為清而為激。


2. 書き下し文

能(よ)く俗(ぞく)を脱(だっ)すれば、便(すなわ)ち是(こ)れ奇(き)なり。
意(い)を作(な)して奇を尚(たっと)ぶ者は、奇と為(な)さずして異(い)と為す。
汚(お)に合(がっ)せざれば、便ち是れ清(せい)なり。
俗(ぞく)を絶(た)って清を求(もと)むる者は、清と為さずして激(げき)と為す。


3. 現代語訳(逐語訳/一文ずつ訳)

  • 「能く俗を脱すれば便ち是れ奇なり」
     → 自然に俗世から離れられる者こそ、真に風変わりで価値ある存在である。
  • 「意を作して奇を尚ぶ者は、奇と為さずして異と為す」
     → 意図的に変わったことをしようとする人は、真の「奇」ではなく、単なる「異端者」にすぎない。
  • 「汚に合せざれば便ち是れ清なり」
     → 汚れたものに染まらずにいられる者こそ、本当に清らかな人である。
  • 「俗を絶って清を求むる者は、清と為さずして激と為す」
     → 極端に俗を拒み、清らかさを追求しすぎる人は、かえって穏やかな清さではなく、偏った激しさに陥る。

4. 用語解説

  • 俗(ぞく):世俗、世間一般の価値観や慣習。物欲・名誉欲など。
  • 奇(き):風変わりだが魅力的なあり方。超然とした品格ある個性。
  • 作意(さくい):意図的につくろうこと。わざとらしさ。
  • 異(い):奇とは異なり、奇抜すぎる、あるいは調和を失した状態。
  • 汚(お):けがれ、不正、堕落した価値観。
  • 清(せい):清廉・潔白。欲にまみれず心が澄んでいる状態。
  • 激(げき):過剰に過激なこと。極端な潔癖や攻撃性。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

自然に世俗の欲や慣習から離れられる人は、それだけで本物の「風格(奇)」を持っている。
だが、わざと変わったことをしようとする者は、ただ目立ちたいだけの「異端者」にすぎない。

また、汚れた価値観に染まらずにいる人こそが清らかな人であるが、俗世を極端に否定して清廉を追い求めすぎる者は、かえって穏やかな清さを失い、激しさ・過激さに堕してしまう。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「自然体の高潔さ」「過剰な差別化・潔癖主義の危うさ」**を対比させた深い教訓です。

  • 真の個性(奇)とは、自然な生き方の中ににじみ出るものであって、作為や誇張では生まれない。
  • 真の清さ(清)とは、俗に染まらぬ節度あるあり方であって、俗を敵視する潔癖や孤高の姿勢ではむしろ「激しさ(過激さ)」に転じてしまう。

本物とは自然であり、無理に“良くあろう”とするほど、その本質から遠ざかる。これはまさに、徳は静かに香るものであるという東洋思想の精髄です。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

●「無理な差別化は“異”になり、真の個性にはならない」

  • 独自性を強調しようとしても、不自然なブランディングや奇抜な施策は、むしろ周囲に違和感を与える。
  • 成功するブランドや人材は、自然体の中でにじみ出る魅力(本質的価値)を持つ。

●「潔癖すぎる改革は、かえって“激しさ”として排他性を生む」

  • 社内改革や倫理強化も、過度な潔癖さや他者否定の姿勢は、チームの調和を損なう。
  • 「清さ」とは、正しさの中に柔らかさと寛容さを伴うもの。

●「本物の“風格”は、目立たなくても際立つ」

  • 目立とうとする行動より、誠実で一貫した行動を淡々と続ける人こそが、最終的に信頼と尊敬を得る。

8. ビジネス用の心得タイトル

「作為なき奇が風格を生み、柔らかな清が人を導く」


この章句は、「奇を求めて異に堕し、清を極めて激に至る」ことの危うさを見抜いた、**“バランスと本質を見極めるための洞察”**です。

「自然であること」「過剰を避けること」「徳は滲ませるもの」という東洋的精神の中に、現代ビジネスにも通じる深い哲学が息づいています。

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