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■引用原文(日本語訳)
二三
称讃してくれる愚者と、非難してくれる賢者とでは、
愚者の発する称讃よりも、賢者の発する非難のほうがすぐれている。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
- 愚かなる者からの称賛の言葉は、たとえ耳に心地よくとも、
- その価値は浅く、自他の成長には寄与しない。
- 一方、賢者が発する非難の言葉は、たとえ厳しく痛みを伴うものであっても、
- そこには真実と導きが含まれており、自己の修正と成長に大きな力をもたらす。
■用語解説
- 称讃(パサンサ):褒め言葉。耳に心地よいが、内容が空虚であることもある。
- 非難(ガルハナ):批判・指摘。耳には痛いが、正しく受け止めれば大きな導きとなる。
- 愚者(バール):物事の本質を見極める智慧に欠け、軽率に言葉を発する者。
- 賢者(パンディタ):真理に基づいて発言し、相手のためを思って正しく批判できる者。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえ耳に心地よい称賛の言葉であっても、それが愚か者からのものであれば意味がない。
一方で、たとえ厳しい非難であっても、それが賢者からの真実に基づいた言葉であれば、それは価値ある教訓となり、自分を高める道しるべとなる。
だからこそ、言葉の“中身”よりも、“誰がそれを言っているか”が重要なのである。
■解釈と現代的意義
この章句は、「耳障りのよい言葉」に流されることへの警鐘であり、**“痛みの中にある真実に耳を傾けること”**の大切さを説いています。
私たちは往々にして、称賛してくれる人を好み、非難する人を遠ざけますが、実際に自分を変えるきっかけをくれるのは後者です。
この教えは、現代のSNS社会・企業文化・教育現場においても極めて実用的かつ重要です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーの姿勢 | 迎合や賛同ばかりを受け入れるのではなく、あえて“耳に痛い意見”を歓迎することが成長の鍵となる。 |
フィードバック文化 | 建設的な批判を恐れずに共有できる風土は、チーム全体の進化を促す。 |
採用・評価 | 褒め上手な人より、改善点を的確に指摘できる人材を高く評価すべき。 |
自己成長 | 稚拙な称賛に溺れず、誠実な批判に心を開ける人が、自らを正しく伸ばしていける。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「褒められるより、正されよ」
甘い言葉は心地よいが、魂は磨かれない。
厳しい言葉は痛みを伴うが、そこにこそ自己を変える種がある。
だからこそ、賢者の苦言にこそ耳を澄ませ、
自らを照らす鏡とせよ。
この章句は、「誰の言葉に耳を傾けるか」が人生の質を左右するという、非常に深い教訓を含んでいます。
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