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■引用原文(日本語訳)
第一七章 怒り(二二二)
走る車をおさえるように、むらむらと起る怒りをおさえる人、
かれをわれは〈御者〉とよぶ。
他の人はただ手綱を手にしているだけである。(〈御者〉とよぶにはふさわしくない。)
■逐語訳
- 走る車をおさえるように
→ 激しく進んでいく馬車のように、 - むらむらと起る怒りをおさえる人、
→ 突然に燃え上がる怒りの感情を自制できる人を、 - かれをわれは〈御者〉とよぶ。
→ その人をこそ、真の「御者(コーチャ)」と呼ぶ。 - 他の人はただ手綱を手にしているだけである。
→ 他の人は、ただ形式的に手綱を持っているだけで、本当には制御できていない。
■用語解説
- 御者(コーチャ):
馬車の手綱を握って導く者。ここでは「自らの心(特に怒り)」を制御できる人物の象徴。 - 手綱(たづな):
馬を操るための道具。仏教では「心の制御」を象徴する。 - 車(チャリオット):
身体と心の比喩として用いられ、馬=感情、御者=理性を指すことが多い。 - 怒り(コーダ):
煩悩の一種。制御できないと、自他を害する。
■全体の現代語訳(まとめ)
走っている馬車を御するように、突発的に起こる怒りを見事に制御できる人こそが、本物の御者である。
ただ手綱を持っているだけで、自らの感情を制御できない者は、御者とは呼べない。
■解釈と現代的意義
この偈は、怒りを制御できるかどうかが、その人の成熟度を決定するという教えです。
単に理屈や知識を持っているだけでは不十分であり、感情に飲まれず、自己の内側をしっかりと統御できるかが真価なのです。
日々の生活や人間関係での「瞬間的な怒り」は特に制御が難しく、その克服が人格と信頼を形成します。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
感情のリーダーシップ | 怒りや苛立ちを表に出さず、冷静に対応できる人が、チームから本当の信頼を得られる。 |
意思決定の冷静さ | 感情的に反応するのではなく、怒りを沈めてから判断することで、より的確な意思決定ができる。 |
人間関係の構築 | 感情に流されず穏やかに接する姿勢が、取引先や部下からの信頼を生み出す。 |
セルフマネジメント | 感情に気づき、それをコントロールできる人は、自律した働き方ができるようになる。 |
■心得まとめ
「怒りに乗るな。怒りを御せ」
感情の手綱を握るのは、自分自身です。
怒りに反応するのではなく、それを制御することで初めて、私たちは本当の意味で「行動の主人」となれます。
ビジネスにおいても、感情の制御力は、知識やスキル以上に重要なリーダー資質です。
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