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幸せとは、事件のない日々をありがたく思えること

人はしばしば「何があれば幸せか」と考えるが、
本当の幸福とは、実は「何もないこと」にある。
心穏やかに、波風立たぬ日常を過ごせること――
それが何よりの福である。

一方、不幸の根源とは何か。
それは「欲が多いこと」「心に思いが多すぎること」にある。
次から次へと欲望を抱え、あれもこれもと追い求めれば、
どれほど恵まれた環境にいても、
心は休まらず、むしろ苦しみは増すばかりである。

とはいえ、人はなかなかそのことに気づけない。
本当に苦労を重ねた者だけが、ようやく「何もない日々のありがたさ」に目覚める。
心を静め、内省できる者だけが、
「欲が多いことは実は不幸である」と理解できるようになる。

人生の幸福とは、にぎやかな出来事の中にではなく、
何事もない「静けさの中」にひっそりと宿っている。


「福(ふく)は事(こと)少(すく)なきより福なるは莫(な)く、
禍(わざわい)は心(こころ)多(おお)きより禍なるは莫し。
唯(た)だ事に苦(くる)しむ者のみ、方(はじ)めて事少なきの福為(た)るを知(し)り、
唯だ心を平(たい)らかにする者のみ、始(はじ)めて心多きの禍為るを知る。」


注釈:

  • 事少なき(ことすくなき)…事件や問題がない、平穏無事な状態。日常の静けさ。
  • 心多き(こころおおき)…欲望や関心が多く、心がざわついている状態。あれこれと気を回しすぎること。
  • 方めて(はじめて)…ようやく。やっとのことで気づく様子。
  • 始めて(はじめて)…物事の真意に初めて気づく瞬間。
目次

1. 原文

福莫福於少事、禍莫禍於多心。
唯苦事者、方知少事之爲福、唯平心者、始知多心之爲禍。


2. 書き下し文

福は、事の少なきに如くはなく、禍は、心の多きに如くはなし。
ただ、事に苦しむ者のみが、初めて「事少なきは福なり」と知り、
ただ、心を平らかにする者のみが、初めて「心多きは禍なり」と知る。


3. 現代語訳(逐語/一文ずつ訳)

  • 「福は、事の少なきに如くはなく」
     → 真の幸福とは、煩わしい用事や雑事が少ない状態に勝るものはない。
  • 「禍は、心の多きに如くはなし」
     → 真の不幸とは、心配事や思い悩むことが多い状態に勝るものはない。
  • 「ただ、事に苦しむ者のみが、初めて“事少なきは福”と知る」
     → 実際に雑事に苦しんだ者であってこそ、静かで自由な状態がどれほどありがたいかを知ることができる。
  • 「ただ、心を平らかにする者のみが、初めて“多心は禍”であることを知る」
     → 心が静まり落ち着いた状態を知った人だけが、心が乱れてあれこれ考えることの苦しさ・不幸に気づくことができる。

4. 用語解説

  • 少事(しょうじ):雑務・面倒な用事が少ないこと。外部の刺激や負担が少ないこと。
  • 多心(たしん):気にしすぎ、考えすぎ、あれこれ思い悩む心の状態。
  • 苦事者(くじしゃ):多忙で重責を負い、苦労している人。
  • 平心者(へいしんしゃ):心の平穏・静けさを知っている人。
  • 方知(ほうち):初めて実感して理解すること。
  • 始知(しち):初めて気づいて真価を理解すること。

5. 全体の現代語訳(まとめ)

幸福とは、雑務や負担が少なく、心が静かであることにほかならない。
逆に、不幸とは、心があれこれと乱れて落ち着かず、思い悩む状態にほかならない。

だが、実際に多忙に苦しんだ者でなければ、「少事のありがたさ」に気づけず、
実際に心が平穏な状態を得た者でなければ、「多心の苦しみ」に気づくことはできない。


6. 解釈と現代的意義

この章句は、**「本当の幸福は“静けさ”と“単純さ”にある」**という東洋的価値観の真髄を語っています。

多忙な日々、複雑な人間関係、過度な情報、絶え間ない思考──これらは現代社会における「多事・多心」です。
しかし実は、何もすることがない静けさや、何も考えない平穏な状態こそが、最も贅沢な幸福であると教えているのです。

ただし、それに気づけるのは、多忙・多心を経験した者のみ
だからこそ、現代人がこの章句を読む意味は非常に深く、リアルです。


7. ビジネスにおける解釈と適用(個別解説付き)

● 「忙しさ=充実」ではない

仕事が詰まり、ToDoに追われ、移動と会議に埋もれる日々──
一見成果を出しているようでも、「本質的な仕事ができているか」は別問題
少事(集中できる環境)を整えることが、真の生産性を生む。

● 「考えすぎ」が判断を鈍らせる

過度な情報収集、将来への不安、人の評価──それらは多心=心の過負荷であり、判断を迷わせる原因になる。
マインドフルネスやジャーナリングなど、心を整える習慣が重要。

● 真のリーダーは「静と簡」を価値にできる

状況を複雑にせず、やることを絞り、発言も的確に短く──
“少なく・静かに・深く”動けるリーダーこそ、混乱の中でも信頼される存在になる。


8. ビジネス用の心得タイトル

「少なく整えることが、最大の富──“静”が生む本物の幸福と成果」


この章句は、現代社会でこそ響く「シンプルさと静けさ」の価値を説く、極めて実践的で普遍的な教訓です。


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