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■引用原文(日本語訳)
「不殺生、平等心、満足、苦行、布施、名誉、不名誉。これら万物の個々の状態は、ただ私のみから生ずる。」
(『バガヴァッド・ギーター』第10章 第5節)
■逐語訳(一語ずつ)
- ahiṃsā(不殺生:非暴力)
- samatā(平等心:偏らぬ心)
- tuṣṭiḥ(満足:足るを知る心)
- tapas(苦行:自己鍛錬)
- dānam(布施:他者への与え)
- yaśaḥ(名誉)
- ayaśaḥ(不名誉)
- bhavanti bhāvā bhūtānāṃ(これらは衆生の属性として現れる)
- mattaḥ eva pṛthag-vidhāḥ(ただ私から、それぞれ異なる形で生じる)
■用語解説
- 不殺生(ahiṃsā):すべての生命に対する害意を持たないこと。言葉・行動・心による暴力を慎む態度。
- 平等心(samatā):人・事象を分け隔てせず、公平・中庸に接する心。
- 満足(tuṣṭiḥ):欲望を追いすぎず、現状を受け入れる心。
- 苦行(tapas):困難に身を置くことで精神を鍛える修行。
- 布施(dāna):物や知識、時間を惜しまず人に与える慈しみの行為。
- 名誉(yaśaḥ)・不名誉(ayaśaḥ):他者からの尊敬または軽蔑。社会的評価の両極。
■全体の現代語訳(まとめ)
「非暴力、平等心、満足、苦行、布施、さらには名誉や不名誉といった評価まで、これらすべての人間的状態は、唯一私(神)から生じるものである」
クリシュナは、善と見なされる性質だけでなく、名誉・不名誉のような二元的な現象さえも、自らが源であることを明言している。
■解釈と現代的意義
この節では、「良いもの」だけでなく「悪いと感じられるもの」もまた、宇宙的な秩序の一部であり、その源は神(根源的原理)にあると説かれています。
すべての経験――非暴力も苦行も、名誉も不名誉も――は偶然ではなく、私たちが学び成長するための「舞台」として与えられている。
それを理解することで、人は状況に翻弄されず、「意味ある受容と行動」ができるようになるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
苦難と成功の意味付け | 名誉も不名誉も、評価の上下に振り回されず、それを糧として次に進む視点を持つ。 |
公平性と包摂力 | 部下や顧客に対して偏見を持たず、平等な心で接することで、信頼されるリーダーとなる。 |
忍耐と修養 | 苦しい局面も、成長のために与えられた苦行(タパス)ととらえることで、前向きに耐える力がつく。 |
寛容と共助 | 不殺生・布施の精神に則り、競争ではなく共創の関係を重んじる姿勢が、持続可能なビジネスを生む。 |
■心得まとめ
「与えられた状況はすべて、学びの種である」
成功も失敗も、称賛も批判も、与えられた試練や徳性はすべて、人生を磨くための道具である。
それが神(宇宙原理)からの授かりものであると知るとき、人は運命に翻弄されることなく、すべてを意味あるものとして受け入れられる。
真の強さとは、「あらゆる経験に意味を見出す力」に他ならない。
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