振替伝票(ふりかえでんぴょう) とは、現金や預金の入出金を伴わない取引(振替取引)を記録するための伝票です。
借方と貸方の両方の勘定科目 を記載し、取引内容を正確に整理する役割を果たします。振替伝票は、現金取引が発生しないため、入金伝票や出金伝票とは異なり、記録の対象となる取引の範囲が広いのが特徴です。
振替伝票を使う場面
振替伝票は以下のような取引で使用されます:
- 売掛金や買掛金の計上
掛け取引による売上や仕入れの記録。 - 減価償却費の計上
固定資産の減価償却費を計上する際。 - 経費の振替
前払費用や未払費用などの調整取引。 - 貸倒引当金の設定
期末に貸倒引当金を設定する場合。 - 費用の配分
共通費用を各部門やプロジェクトに按分する際。
振替伝票の記載項目
- 伝票番号
各伝票を一意に識別する番号。 - 日付
取引が発生した日付。 - 摘要(取引内容)
取引の概要を簡潔に記載。 - 借方科目と金額
取引の借方に記載する勘定科目と金額。 - 貸方科目と金額
取引の貸方に記載する勘定科目と金額。 - 備考
必要に応じて補足情報を記載。
振替伝票の記録例
1. 売掛金の計上
取引先に商品100,000円を掛けで販売した場合。
振替伝票の記載内容:
- 日付:2024年12月22日
- 摘要:商品売上(掛取引)
- 借方科目:売掛金 100,000円
- 貸方科目:売上 100,000円
仕訳:
借方:売掛金 100,000
貸方:売上 100,000
2. 減価償却費の計上
取得価額500,000円、耐用年数5年の備品の1年分の減価償却費100,000円を計上した場合。
振替伝票の記載内容:
- 日付:2024年12月31日
- 摘要:備品減価償却費
- 借方科目:減価償却費 100,000円
- 貸方科目:減価償却累計額 100,000円
仕訳:
借方:減価償却費 100,000
貸方:減価償却累計額 100,000
3. 未払費用の計上
翌期に支払う予定の家賃50,000円を未払費用として計上した場合。
振替伝票の記載内容:
- 日付:2024年12月31日
- 摘要:家賃未払分計上
- 借方科目:地代家賃 50,000円
- 貸方科目:未払費用 50,000円
仕訳:
借方:地代家賃 50,000
貸方:未払費用 50,000
振替伝票のメリット
- 取引内容の整理が簡単
現金取引を含まない取引を明確に記録できる。 - 記録の正確性向上
借方と貸方の両方を記載するため、仕訳のミスを防止できる。 - 帳簿作成の効率化
振替伝票を基に仕訳帳や総勘定元帳を作成しやすくなる。
振替伝票と他の伝票の違い
項目 | 振替伝票 | 入金伝票 | 出金伝票 |
---|---|---|---|
目的 | 現金を伴わない取引を記録 | 現金または預金の入金を記録 | 現金または預金の出金を記録 |
記録形式 | 借方・貸方の両方を記載 | 借方は「現金」、貸方は相手科目を記載 | 貸方は「現金」、借方は相手科目を記載 |
取引例 | 減価償却費の計上、売掛金の計上など | 売掛金の回収、現金売上など | 仕入代金や経費の支払い |
振替伝票を使う際の注意点
- 摘要の具体性
摘要欄に取引内容を具体的に記載し、不明点が残らないようにします。 - 勘定科目の選定
適切な勘定科目を選ぶことで、帳簿全体の整合性を保つことができます。 - 正確な金額記入
借方と貸方の金額が一致していることを確認します。 - 伝票の保管と整理
振替伝票は日付順や伝票番号順に整理して保管し、必要時に迅速に参照できる状態にします。
まとめ
振替伝票は、現金や預金を伴わない取引を記録するための便利な伝票です。簿記や経理の実務においては、振替伝票を正確に作成・管理することで、帳簿作成の効率化や取引内容の透明性向上につながります。
経理担当者や簿記学習者は、振替伝票の使用場面や仕訳の方法をしっかりと理解し、日常業務や試験対策に役立てましょう。
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