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■引用原文(日本語訳)
アルジュナはたずねた。
「これら三要素を超越した人はどのような特徴をそなえているか。主よ。彼はどのような行動をし、どのように三要素を超越するのか。」
(第14章 第21節)
■逐語訳
アルジュナは問う:
「主よ、グナ(三つの性質)を超えた者は、どのような印(徴候)を持っているのでしょうか?
彼はどのように行動し、その性質たちをどのように乗り越えるのでしょうか?」
■用語解説
- 三要素(三グナ):サットヴァ(純質)、ラジャス(激質)、タマス(暗質)という自然の性質。
- 超越(atītya):それに巻き込まれず、それを支配し、それを見つめる“観照者”の立場になること。
- 特徴・徴候(liṅgaiḥ):表れ、外面的なしるし。行動・態度・雰囲気ににじみ出る人格的な印象。
- 行動(ācaraṇa):内面に応じたふるまい、日常の態度や習慣。
- いかに超えるか(kathaṁ ativartate):理論だけでなく、実際にどのようにしてその性質から自由になるのか、という問い。
■全体の現代語訳(まとめ)
アルジュナはクリシュナに問う。
「三つの性質(グナ)に縛られない“真に自由な人”とは、どんな特徴を備えているのか?
その人は、どのように行動するのか?
そして、私たちはどうすればその境地に到達できるのか?」
これは“解脱者の肖像”と“自由への実践法”を求める、非常に本質的な問いである。
■解釈と現代的意義
この節は、霊的成長においてきわめて重要な転換点を表しています。
それまで教えを受けてきたアルジュナが、ついに“自ら問う”ことで、深い実践への扉を開きます。
ここには3つの重要な要素があります:
- 何が「グナを超えた人」の特徴か?(理想像)
- その人はどう行動しているのか?(現実の生き方)
- どうすれば自分もその境地に至れるのか?(実践方法)
つまり、「理想を知りたい」「現実を学びたい」「道筋を歩みたい」――
この三つが揃って、学びは“自分のもの”になります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
本質的な問いを持つことの力 | 「どうすれば成功できるか?」ではなく、「真に成熟したリーダーとは何か?」「それをどう実践するか?」と問う者は、深い変容を遂げる。 |
理想像の具体化 | 単なる目標設定ではなく、「理想のあり方・人格」を明確に描き出し、それに近づく行動をとることが、自律型成長の鍵。 |
問いの質が人生を決める | 行き詰まりを感じたとき、「どう抜け出すか」ではなく、「この状況で“超越者”ならどう振る舞うか?」と問うことで、視座が変わる。 |
問いによるリーダーシップ | 部下に「やったか?」と聞くのではなく、「この行動は我々の理念とつながっているか?」と問うことで、組織の純質的文化が育まれる。 |
■心得まとめ
「問う者こそが、超える者である」
真の自由は、ただ知識を得ることでも、静かにしていることでもない。
「私はどうなりたいか」「それはどう実現されるのか」と自ら問い始めたとき、
人はすでに、自由への道を歩み出している。
この問いこそが、三グナの束縛を超える第一歩なのだ。
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