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■引用原文(ダンマパダ 第三章「心品」 第33偈)
「心は、動揺し、ざわめき、護り難く、制し難い。英知ある人はこれを直くする。弓矢職人が矢柄を直くするように。」
—『ダンマパダ』 第3章 第33偈(中村元訳・岩波文庫)
■逐語訳(一文ずつ)
- 心は動揺し:心は定まらず、常にあちこちに揺れ動く。
- ざわめき:さまざまな思考や感情が絶え間なく沸き起こる。
- 護り難く、制し難い:自分の心であっても、その動きに対してコントロールするのは容易ではない。
- 英知ある人はこれを直くする:知恵ある人は、その揺れ動く心を正しい方向に整える。
- 弓矢職人が矢を真っ直ぐにするように:繊細かつ根気強く、心を整える努力を続けるべきことが示唆されている。
■用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
心(チッタ) | 感情・思考・欲望などすべての精神活動の中枢。極めて不安定で変化しやすい。 |
動揺・ざわめき | 心の不安定さ。煩悩・執着・恐れなどにより常に動いている状態。 |
護る | 外部の刺激や内部の煩悩から心を保護すること。仏教では「心の防衛」が修行の一環とされる。 |
制する | 心をコントロールし、欲望や怒りに支配されない状態に導くこと。 |
矢柄(やがら) | 弓矢の矢の軸。まっすぐでなければ正しく飛ばず、職人は丁寧に真直ぐに調整する。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
心はつねに動き回り、感情や欲望によって揺れ動く。外からの刺激にも、内なる不安にもすぐに反応してしまう。しかし、英知ある人はそのような心を放置せず、自分の力でまっすぐに整えていく。その姿勢はまるで、矢職人が矢を真っ直ぐに整えるような、根気と繊細さを要する努力なのである。
■解釈と現代的意義
この詩句は、「心を放っておいては流されるままであり、自覚的に鍛えなければ制御はできない」という真理を示しています。現代社会では情報過多・人間関係・不安定な環境など、心をざわめかせる要因が無数にあります。しかし、真の成長とは、それらに振り回されず、冷静に自分の心を見つめ整えることにあると説いています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
感情の自己管理 | 怒りや焦りに任せた言動では、職場で信頼を失う。心を整え、反応ではなく対応を心がける。 |
集中力の維持 | 雑念や不安で集中を欠くと、ミスや判断の誤りが増える。心の静けさは業務の精度を高める。 |
冷静な判断力 | 顧客対応・クレーム処理・重要会議など、心が揺れる場面ほど落ち着きが求められる。 |
リーダーの資質 | 他者の動揺に影響されず、安定した心で部下やチームを導ける人が本物のリーダー。 |
■心得まとめ
「心を鍛える者だけが、真に自分の人生を導ける」
心はそのままでは不安定で頼りにならない。だからこそ、日々心を見つめ、整え、磨く必要がある。まっすぐな矢が的を射抜くように、整った心だけが真の目標に到達する力を持つ。ビジネスにおいても、自分の内面を鍛えることは最大の資産であり、他人を導く前にまず自分自身を導くことから始めるべきなのである。
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