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執著の奔流を断ち、彼岸へ渡る者


目次

📜引用原文(日本語訳)

第七四偈
疾く勢よく奔り流れる妄執の水流を涸渇させて、
妄執をすっかり断ち切ってしまった修行僧は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
―『ダンマパダ』 第二章 第七四偈


🔍逐語訳と意図

  • 妄執(ウパーダーナ):誤った執着。とくに「わがもの」「私こそ」といった錯覚から生まれる強い固執心。
  • 水流を涸渇させる:止めどない欲望や妄想の流れを断ち、心を澄ませること。
  • こなたの岸:煩悩と苦しみに満ちた、私たちが生きている世俗世界。
  • 蛇の脱皮:不要となったものを潔く手放す比喩。新たな次元への移行。

📚用語解説

用語解説
妄執間違った思い込みに基づく強い執着。「これこそが自分」「これは失ってはならぬ」といった錯覚に根ざす。
涸渇(こかつ)させる潤いを失わせる、枯らす。心の中で燃え上がる煩悩の流れを止めること。
こなたの岸生死のサイクル(輪廻)に縛られた世界。仏教では「此岸(しがん)」と呼ばれる。

🪞全体の現代語訳(まとめ)

私たちの心は、妄想と執着という水流によって、
ときに呑まれ、ときに流されていきます。
その激しい流れを完全に「枯らす」――
すなわち、その源である妄執を絶つことができたならば、
修行僧はもはやこの世に留まる必要がなく、
彼岸(真理と安らぎの世界)へと至るのです。

それはちょうど、蛇が古い皮を脱ぎ捨てて、
軽やかに進んでいくような姿にたとえられます。


🧠解釈と現代的意義

妄執は、単なる「欲」ではなく、
「自分こそが正しい」「この立場が自分だ」「これを失ってはならぬ」
といった、自己の幻想から生まれる執着です。

現代の社会生活においても、
・肩書や役職
・他者からの評価
・所有物や経歴
・過去の成功体験
などへの過剰なこだわりは、妄執の一形態です。

これらを「絶つ」ことは、自己否定ではありません。
むしろ、「自分を真に自由にする行為」であり、
結果として静けさと創造性に満ちた生き方が可能となるのです。


💼ビジネスにおける解釈と適用

観点応用例
リーダーシップ自らの立場・過去の成功・自我へのこだわりを捨てることで、組織変化に柔軟かつ謙虚に対応できる。
プロジェクト管理「これは自分の案だ」と執着しすぎると、より良い意見や方向転換の機会を失う。妄執を捨てることで、最適解を追求できる。
意思決定個人的な思い込みやプライドを手放すことで、冷静で公正な判断ができるようになる。
キャリア形成特定の会社やポジションに固執せず、自分の本質的価値を探求する柔軟な姿勢が、長期的な満足と成長につながる。

✅心得まとめ

「奔る妄念を枯らす者は、自由を得て、彼岸へ渡る」

執着の流れは、速く激しく、しばしば自分を呑み込もうとします。
その奔流を止めるには、勇気と智慧が必要です。
しかし、それができたとき――
人は自由になり、本当に歩むべき道を見出すのです。
妄執という古い皮を脱ぎ捨ててこそ、
私たちは「わたしらしく」生きられるようになるのです。


この節も、人生や仕事に深く活かせる金言です。

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