目次
📜 引用原文(出典:『ダンマパダ』第29偈)
心を押し流す三十六の激流がある。
それらの激流は、邪見をもつ者の、
貪欲に根ざした想いによって、人を漂わせていく。
※サンスクリット・パーリ伝統によると、「三十六の激流」は感覚欲・貪り・怒り・愚かさなどの三十六種の煩悩の奔流を象徴しています。
🪶 逐語訳(意訳)
- 世には、心を押し流す三十六の激しい流れ(煩悩)がある。
- それらは、邪まな見解をもつ人々の、
- 根底にある「貪欲」から生じる想念により、
- その人の心を惑わせ、人生を漂わせる。
📘 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
三十六の激流(ṭhāna-udaka) | 仏教における煩悩・執着・錯覚・欲望などの内的エネルギーの奔流。 |
悪しき見解(micchā-diṭṭhi) | 仏教的真理に反する思い込みや偏見。「自己中心的世界観」など。 |
貪欲(lobha) | 「もっと欲しい」「まだ足りない」と求め続ける心。 |
想い(saññā / vitakka) | 知覚や思考の働きで、執着や思い込みに左右される認識活動。 |
漂し去る(saṃsāra) | 生死の輪廻・流転の意。苦しみの世界をさまようこと。 |
🧾 全体の現代語訳(まとめ)
人の心は、目に見えない「三十六の激流」によって
簡単に流されてしまう危険がある。
それらの流れは、怒りや嫉妬、快楽への執着など――
すべてが「貪欲」に根ざした想念によって作り出されている。
そして、そのような想いに染まった人は、
真実を見誤る「誤った見解」に陥り、
気づかぬうちに人生を見失い、
流されるままに漂うことになる。
🔍 解釈と現代的意義
この句は、内面的な混乱や苦しみの本質が、自らの想念・欲望によって生まれることを明示しています。
「激流」は外的環境ではなく、心の内側から生じるものです。
現代社会では、次のような形で表れます:
- 絶え間ない物欲と刺激(消費主義)
- 承認欲求に翻弄されるSNS依存
- 不安や焦りからくる情報過多・選択麻痺
- 他人と比較し続ける人生観
いずれも根底にあるのは、**「もっと」「まだ足りない」**という貪欲です。
そして、それらが誤った価値観(例:成功至上主義)に繋がると、
私たちは「本当の豊かさ」や「心の安定」からどんどん離れていきます。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
意思決定の健全性 | 欲に基づいた判断は一時的には利益をもたらしても、長期的には破綻を招く。 |
企業文化と価値観 | 数字・売上だけを追う文化は、「激流に流される組織」となりやすい。 |
個人のキャリア設計 | 「もっと収入を」「もっと評価を」と追い続けると、心の満足や意味を失う。 |
持続可能な成長 | 欲望ではなく「貢献」や「内なる納得」を動機にした行動こそが本物の成長に繋がる。 |
💡 心得まとめ(結びのことば)
「欲望がつくる激流は、人生を見失わせる。」
「心をとどめ、真理に錨を下ろせ。」
激流の中をただ流されるのではなく、
その流れを見つめ、流されない心をつくること――
それこそが、ブッダが説いた真理への第一歩です。
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