今日の競争の激しいビジネス環境において、企業が生き残るためには、ただ反応的に市場の変化に対応するだけでなく、ビジョンを持ち、積極的な目標設定が不可欠です。
<積極的な目標設定>
目標=生き残る条件×客観情勢の考察×トップの意図
です。
- 受動的要因
- 目標は企業のトップの意図を反映させるもの
- ビジョンの重要性
経営者の意図やその背後にある哲学が、企業の目標管理プロセスにどのように影響を与えるのか、そしてそれが従業員のモチベーションや企業の社会的責任にどのように結びつくのかを考察します。
成功への道のりは必ずしも平坦ではありませんが、明確な指針と強いリーダーシップによって、驚くべき成果が達成される可能性を秘めています。
企業の生存基盤と受動的要因
企業の目標は、生きるための条件が基礎になっているのであるから、ある意味では、トップの意図とは無関係なのである。
つまり、内部費用(参照:目標の領域⑤!収益性)などは、トップが好むと好まざるとにかかわらず、ほとんどの部分は自動的に決まります。
客観情勢も、トップの意図とは無関係に変化します。当然のこととして、それに対処するのは、トップの受身の意志といえます。
受身の意志とはいえ、これは容易ならざる重大事であることに変わりはありません。しかし、これだけが目標のすべてではありません。
トップの積極的な意図
「トップの積極的な意図」がある。これが、「生きるための条件」に上のせされて、目標がよりすぐれたものになる(もっとも、この二つは必ずしも明確に区別されるとはかぎらない。というよりは、区別するのがむずかしいといったほうがよいかもしれない)。
トップの意図は、トップの人生観、宗教観、使命感がもとになって生まれてきます。
たとえば、
- 「生活必需品は、水道の水のように豊富でなければならない。そうなったら貧困は克服される。われわれは、貧困を克服するために生産をやるんだ」(松下幸之助)
- 「世界一でなければならない」(本田宗一郎)
- 「うちの社員には、結婚までにマイカーをもたせ、三〇歳でマイホームがもてるように」(A産業社長)
威勢のいいのもあれば、きわめて現実的なものまでいろいろあります。
それは、「正しいもの」であるかぎりなんでも問題ありません。これが企業の成員に社会的責任を感じさせたり、希望をもたせたりすることになります。
ところが、「トップの意志」の次元が高ければ高いほど、また、すぐれた革新と創造の理念をもっておればおるほど、その目標は現実とはかけ離れたものになってゆくものである。
そして、これに対して、「夢物語」「大風呂敷」というような批判が、必ずつきまとうのである。
昭和三〇年に発表された、わが国ではじめてといわれる、松下電器産業の「長期経営計画」も、それが発表されたときには、誇大であるという批判を八方からあびたようです。
年商二〇〇億円を五年間で四倍の八〇〇億にしようというのである。年率三〇%以上の急伸長なのだ。
この計画は、会社の必死の努力で四年目に目標を達成し、五年目には一、〇〇〇億に達したという驚異的な成果を収めたのである。
家庭電化時代を見きわめた積極策によって、「天下の大松下」の実現に大きな貢献をしているのである。
われわれは、トップの打ち出した目標が大きく高いものであればあるほど、これに批判の目を向けるよりは、その意図を理解しようと努める必要があるのだ。これがトップに対する幹部の態度なのである。
まとめ
企業の生存条件は自律的に形成され、トップの個人的な意図から独立しているが、それだけが全てではない。成功への道は、トップの積極的な意図、その人生観や使命感から生まれる。
これは、松下幸之助のようなビジョンによって証明されている。一見非現実的に見える目標も、企業の熱意と戦略により達成可能であり、批判より理解を深めるべきである。
これが、トップリーダーシップと目標管理の真髄であり、経営幹部の模範的な姿勢である。
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