目次
📜引用原文(日本語訳)
第六十七偈
蛇の毒が(身体に)ひろがるのを薬でとめるように、
愛執が起ったのをとめる修行僧は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
― 『ダンマパダ』 第二章 第六十七偈
🔍逐語訳(意訳)
- 蛇の毒がひろがるのを薬でとめるように:
有害な感情が広がる前に、自覚と智慧で断ち切る比喩。 - 愛執が起ったのをとめる修行僧:
人や物事への執着が芽生えた瞬間に気づき、それを抑える者。 - こなたの岸を捨て去る:
煩悩と迷いのこの世を超え、悟りの彼岸に至ること。 - 蛇が脱皮して古い皮を捨てるようなもの:
旧い自我・執着心を脱ぎ捨てる精神の変容のたとえ。
📚用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
愛執(ターンハー) | 情愛や親しみを超えた、強い依存的な執着心。 |
薬(バイシャジャ) | 智慧、気づき、修行による治療的行動。 |
岸(ティーラ) | 現世、五欲・煩悩・迷いのある状態のたとえ。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
愛情が過ぎて執着となり、
相手を束縛し、自分も苦しめてしまう。
その心の動きを、毒がまわる前に断ち切る修行僧は、
執着の世界を離れ、
蛇が皮を脱ぎ捨てるように、
軽やかな存在へと生まれ変わる。
🧠解釈と現代的意義
「愛」は人間の美しい感情でありながら、
それが「執着」に変わったとき、
人を支配し、苦しめ、恐れや怒りの源になります。
- 相手に期待しすぎて裏切られると、怒りや悲しみが生まれる。
- 「この人がいなければ」「このモノがなければ」と依存すれば、失ったときに深く揺さぶられる。
この偈は、「愛そのものを捨てよ」と言っているのではありません。
**「愛にとらわれるな」「愛に自由を与えよ」**と語っているのです。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
リーダーシップと距離感 | 部下や同僚に過剰な期待や執着を持つと、失望やコントロール欲に変わる。信頼と距離のバランスが必要。 |
プロジェクトへの愛着 | 大切に育てた企画に固執しすぎると、冷静な判断を失い、変化に適応できなくなる。 |
所有への執着 | モノや地位、権限を「自分のもの」と固く握りしめると、それを失う不安に心が縛られる。 |
感情の手放し | 執着が感情を曇らせる前に、「これは必要なことか?」と問い直す習慣が心の自由をもたらす。 |
✅心得まとめ
「本当の愛は、手放す勇気の中にある。」
「これがなければ」「この人がいないと」
という思いは、愛ではなく愛執。
それはやがて恐れや苦しみの根となる。
蛇が脱皮するように、
いまの自分を縛る執着を脱ぎ捨ててこそ、
あなたの心は、本当に自由になる。
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