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■引用原文(日本語訳)
二〇
愚者は、千の句をとなえても一の句さえも理解しない。
聡明な人は、一つの句をとなえても、百の句の意義を理解する*。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
- 愚かな者は、たとえ千の句を暗唱できても、
- そのどれ一つとして真に理解することはない。
- 一方で聡明な者は、
- 一つの句を学ぶだけでも、その背後にある百の句の意味を読み取り、深く理解する。
■用語解説
- 愚者(バーラ):ただ形式的に記憶し、表面的に知っているだけの人。思索や実践のない者。
- 千の句(サハッサ・ガーター):仏典や真理の言葉、学びの教材などの膨大な言葉の数。
- 聡明な人(パンディタ):真理を自らの経験や思索によって深く捉える智慧ある人。
- 百の句の意義:言葉の背後にある本質的意味、隠れた教訓、文脈や応用までを含む洞察。
■全体の現代語訳(まとめ)
表面的に多くの句を暗唱したとしても、愚かな者はその中の一つすら深く理解することができない。
しかし、聡明な者は、一つの句に真剣に向き合うことで、百の句が伝えようとする本質を捉える。
つまり、本当の理解とは「量」ではなく「深さ」によって決まるのである。
■解釈と現代的意義
この章句は、「暗記と理解の違い」「情報と智慧の違い」を仏教的に説いた重要な教えです。
現代は情報が氾濫する時代ですが、その多くが“蓄積”に偏っており、“咀嚼と内化”が伴っていません。
本当に意味のある学びとは、少ない言葉でもその深層を掘り下げ、人生や判断に活かす力を養うことです。
逆に、どれだけ知識が多くても、それが単なる「記憶の山」であれば、智慧とは言えません。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
人材評価 | 知識量よりも、「それをどう理解し応用しているか」によって真の実力が問われる。 |
研修・教育設計 | 詰め込み型より、ひとつの言葉・原理に深く向き合う時間を重視した設計が効果的。 |
判断力の本質 | 複雑な資料を読みこなすよりも、ひとつの指針を状況に応じて応用できる人が信頼される。 |
自己成長 | 多読や資格取得よりも、「心に残った一つの言葉を毎日問い直す」姿勢が真の成長につながる。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「千の言葉より、一語を生きよ」
知識を並べることは簡単だが、それを生きることは難しい。
しかし、真理とは一つであっても、深く理解し実践すれば、百にも千にも広がっていく。
だからこそ、量に溺れず、意味に沈み、一語に魂を込めて生きよう。
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