目次
■原文(日本語訳)
第2章 第51節
クリシュナは言った。
「知性をそなえた賢者らは、行為から生ずる結果を捨て、
生の束縛から解脱し、患いのない境地に達する。」
■逐語訳
- ブッディ・ユクターー・ジャハーティ・ハ(知性を備えた者は捨てる):霊的知性に立脚する人々は捨て去る。
- イハ・イヴァ・ファラーム・カルマナハ(この世において、行為の結果を):現世の行動から生じるあらゆる報酬や結果への執着を。
- サイナス・ヤティ(到達する):達する。
- ジャナマ・バンダ・ヴィニルムクターーハ(生の束縛から解放された者として):輪廻の原因となる執着から自由になり。
- ドゥッカム・アシャナム・ガチャャンティ(苦悩なき場所に至る):苦しみのない平安な境地に到達する。
■用語解説
- 行為の結果(カルマ・ファラ):行為によってもたらされる報酬・成果。期待や失望の源でもある。
- 生の束縛(ジャナマ・バンダ):輪廻(生と死の繰り返し)を生み出す根本原因。欲望・執着・無知により生じる。
- 解脱(ヴィニルムクタ):束縛からの完全な自由。モークシャ。
- 苦悩なき境地(アシャナム):精神的平穏・煩悩の消滅・真の安心。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナはここで、知性に基づき行為する者は、その結果に執着しないことで、
輪廻(生の束縛)から自由になり、心の苦悩を超えた境地に至ると説いています。
行為そのものは必要だが、結果への欲望を手放すことが、精神的自由を得る鍵だと明示しています。
■解釈と現代的意義
この節は、行為の「あり方」が私たちの人生に何をもたらすかを説いた重要な一節です。
成果を求めて動くことは自然なことですが、
結果にとらわれることで、私たちは常に不安・恐れ・怒りに縛られてしまうのです。
それに対し、ギーターが示すのは――
「なすべきをなして、結果は手放す」という智慧。
この態度こそが、心を平静に保ち、真の成長・悟りへと導くものなのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
ストレスマネジメント | 成果にとらわれると、達成できなかったときの不安や自己否定が大きくなる。 |
結果を手放すことで、平穏さと柔軟性を取り戻せる。 | |
継続的成長の姿勢 | 評価や報酬がなくても「成長のため」「使命のため」に行動できる人は強い。 |
高次の動機付け | 承認や報酬ではなく、「自らの価値観や信念」に基づいて動けることが、本質的なモチベーションにつながる。 |
組織内信頼の確立 | 結果に固執せず、誠実に努力する人は、結果以上の信用を得る。 |
■心得まとめ
「心を縛るのは、結果への執着である」
なすべきことをなしても、結果に執着すれば苦しみは残る。
しかし、結果を超えて行動できる者は、
すでに心の自由を得ている。
ギーターは語る:
「行為を智慧で照らし、執着を手放せ。
そのとき、真の平和が訪れる」
ご希望があれば、次の第52節「知性が迷いを超えるとき、聞き知ったことすら無意味になる」へ進めます。
コメント