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📜 引用原文(日本語訳)
「実に祭祀により繁栄させられた神々は、汝らに望まれた享楽(食物)を与えるであろう。
神々に〔祭祀を〕捧げないで彼らに与えられたものを享受する者は、盗賊に他ならぬ。」
(『バガヴァッド・ギーター』第3章 第12節)
🔍 逐語訳
「祭祀によって育まれた神々は、人間に望むもの(食物・享楽)を与える。
だが、人が神々に供物(祭祀)を捧げることなく、それらを享受するならば、
その者は盗人(テーナ)に等しい。」
🧩 用語解説
- 祭祀(ヤジュニャ):神々や社会に対する奉仕・捧げもの。行為を私的なものとせず、全体のために差し出すこと。
- 享楽(ボーガ):物質的な快楽・食物・財産など。人間が欲する生活上の利益。
- 盗賊(テーナ):不正に他人のものを奪う者。ここでは「与えずに受け取る者」を指す比喩的表現。
- 神々(デーヴァ):自然の力、宇宙の原理、社会システム、人間関係などを象徴する広義の存在。
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
人間が享受するあらゆる恵み(食物・快適さ・成果)は、祭祀――つまり奉仕・捧げる行為を通じて得られるとギーターは説きます。
神々(自然や社会)は、祭祀に応じて人間に恵みを与える。
しかし、人が何も捧げずにそれを一方的に受け取るなら、それは盗みと同じである。
これは非常に厳しくも倫理的な真理の表明です。
💡 解釈と現代的意義
この節は、「受け取る責任」と「恩返しの倫理」を強く示しています。
私たちは日々多くの恩恵を享受しています――食事、空気、教育、インフラ、他者の労働…。
それらを当然のように受け取るだけで、何も返さないとすれば、それは“社会的窃盗”であるという警告です。
ギーターは、与えることと受け取ることのバランスが、世界の調和を保つ根本原則であると説いています。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
利潤と還元のバランス | 利益を得るだけで社会に還元しない企業は、持続性を失う。利益は祭祀(貢献)とセットであるべき。 |
従業員・取引先への感謝 | 生産や運営に関わる人々の支えがあるからこそ成果が得られる。それを当然と思わず、しっかり感謝と報酬を返すべき。 |
感謝の文化づくり | 「もらうのが当たり前」という風潮を正し、感謝・奉仕・還元の精神を文化として根付かせることで、組織全体が成熟する。 |
消費と社会的責任 | 顧客やユーザーとしても、得るだけでなく応援・支援・フィードバックを通じて、関わったものに「返す」姿勢が求められる。 |
🧠 心得まとめ
「受け取るなら、必ず捧げよ――与えずに得る者は、世界の調和を破る者である」
この節は、利他と利己のバランスを問う倫理的核心です。
誰かが与えてくれた恵みを、当然のものとして受け取るのではなく、何を返せるかを考える。
それが、社会と自分の両方を豊かにする行為であり、盗人にならないための唯一の道なのです。
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