目次
📜引用原文(日本語訳)
一七*
財を蓄積することなく、わがものという思いが存在せず、また(何ものかが)ないからといって憂えることのない人、
かれこそ「修行僧」(托鉢僧)とよばれる。
― 『ダンマパダ』 第二章 第十七偈
🔍逐語訳(文ごとの意訳)
- 財を蓄積することなく:物を集めて所有しようとする行為をせず、
- わがものという思いが存在せず:これは「自分のものだ」という所有意識や執着がなく、
- (何ものかが)ないからといって憂えることのない人:持っていないことを嘆いたり、他人と比較して劣等感を抱くこともない人、
- かれこそ「修行僧」とよばれる:そのような人こそ、真に托鉢僧(比丘=仏道を歩む者)としてふさわしい。
📚用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
財を蓄積しない | 物質への執着を断ち、「必要なときに、必要な分だけを受けとる」仏教的ミニマリズムの実践。 |
わがものという思い | 自我と所有欲の根源。「私のもの」「私が得た」とする心が、苦しみを生む。 |
憂えることのない人 | 欠乏を恐れず、失っても悩まず、今ある状態に満足できる心の成熟。 |
托鉢僧(修行僧) | 出家して世俗を離れ、乞食(こつじき)で最低限の糧を得ながら精神修養に励む者。 |
🪞全体の現代語訳(まとめ)
物をため込まず、「これは自分のものだ」という思いに縛られず、
何かが欠けていてもそれを悩まない――そんな人こそが、
真に自由な心を持った修行僧であり、解脱への道を歩む者なのである。
🧠解釈と現代的意義
この偈は、「所有=自由ではなく、むしろ束縛である」という仏教の根本的な見方を示しています。
私たちは「もっと欲しい」「なくなると困る」と思って物を持ちたがりますが、
その裏には不安、比較、損失への恐れが潜んでおり、所有が心を不自由にしているのです。
それに対しこの偈は、**「所有しない」「執着しない」「欠乏を憂えない」**という、
究極にミニマルで成熟した生き方こそが、心の自由と安らぎをもたらすと教えています。
💼ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
ミニマリズムと経営 | 余剰資産や在庫を抱えるより、必要最小限で効率的に回す設計が持続可能な経営を実現する。 |
物や地位に依らない幸福 | 報酬・役職・成果などの「外的要因」に依存せず、自己の内面に満足を見出す働き方が、安定したメンタルと創造性を育てる。 |
執着なきリーダーシップ | 「自分の功績」「自分の部下」などの意識を手放し、組織全体の成長を優先する姿勢が信頼を呼ぶ。 |
欠乏不安からの解放 | 「足りないから不幸」と考えるのではなく、「なくても心が満ちている」という価値観が、ストレスを減らし持続力を高める。 |
✅心得まとめ
「持たぬ者が、最も満たされている」
所有が心を縛り、欠乏が不安を呼ぶ。
だが、何も持たず、何も求めず、それでもなお微笑んでいられる人――それこそが真の豊かさを知る者である。
修行とは、手に入れることではなく、手放すことの練習なのだ。
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