MENU

怨みに乗らぬ者こそ、真の賢者なり


目次

📜 引用原文

第一四章 憎しみ 一二
「怨みは怨みによっては決して静まらないであろう。
怨みの状態は、怨みの無いことによって静まるであろう。
怨みにつれて次々と現われることは、ためにならぬということが認められる。
それ故に、ことわりを知る人は、怨みをつくらない。」
— 『ダンマパダ』


🔍 逐語訳

怨みは、怨みで返しても、決して鎮まることはない。
怒りや報復の心は、新たな怨みを生み出し続ける。
だが、怨みのない心によってこそ、怨みは静かに終息する。

怨みによって生まれるさらなる怨みは、
人にも社会にも何の益ももたらさないことが、明らかに認められている。

だからこそ、真理(ことわり)を知る者は、そもそも怨みを生み出さないのである。


🧩 用語解説

  • 怨みの無いこと:怒りを抱かず、報復に走らない心の在り方。慈悲・無執着に通じる。
  • 次々と現れる怨み:報復に報復を重ねる連鎖。個人間にも国家間にも見られる普遍的構造。
  • ためにならぬ:結果として破壊・分断・苦悩しか生まないこと。
  • ことわりを知る人:真理(ダルマ)を理解し、感情に支配されず、智慧に基づいて生きる者。

🧾 全体の現代語訳(まとめ)

怒りや怨みを、同じ怨みで返しても、
それが収まることは決してない。
だが、怒りを受け入れず、憎しみを抱かぬことによってこそ、
争いと怒りの連鎖は終わりを迎える。

怨みに怨みを重ねても、
それは何の役にも立たず、ただ苦しみを増すだけである。

だからこそ、真理を知る人は、
怨みを「生まない」「育てない」生き方を選ぶのだ。


🧠 解釈と現代的意義

この句は、「怒りの連鎖を断ち切るには、最初にそれを抱かないこと」が
最も根源的かつ効果的であることを示しています。

前節では「耐え忍ぶこと」が怨みを静めると説かれましたが、
本節ではさらに進んで、**「怨みそのものをつくらない心」**こそが理想であると示します。

現代においては、SNSやビジネスの場でさえ「仕返し」「正義の名の怒り」が
称賛されがちです。しかし仏陀の視点では、たとえ正しくても怒りは害を生む
だからこそ、智慧ある者は感情を選び取り、怨みに加担しないのです。


💼 ビジネスにおける解釈と適用

観点実務での活用例
反応より対応批判されたときに「反応」ではなく「対応」を選ぶ。怒りに乗らず、理性的に行動する。
感情リーダーシップ上司が怒りの連鎖を断てば、部下も安心して意見を言えるようになる。職場の安全性が高まる。
対立処理相手の挑発や批判に感情的に応じるのではなく、静かな言葉で建設的対話に持ち込む。
文化形成組織内で「感情に巻き込まれない文化」「一歩引いて見る訓練」を育てることで、チーム全体の成熟度が上がる。

🧭 心得まとめ

「最も強い者とは、怒りを抱かぬ者である」
「争いを終わらせる者は、争いを始めぬ者だ」

この句は、怒りに屈しない心の強さ、
そして智慧をもって感情を選ぶことの尊さを教えてくれます。

私たちは日々、怒る理由や怨む理由に囲まれています。
しかし、それを選ぶかどうかは、私たち自身の意思に委ねられている――
それこそが、ことわりを知る者の道なのです。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次