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怒りに支配される者は、どこにも安らぎを得られない


目次

📜 引用原文(日本語訳)

第二〇章 怒り五
「かれは、恥じることもなく、愧じることもなく、誓戒をまもることもなく、怒りたける。
怒りに襲われた者には、たよりとすべきいかなる帰趣*もこの世に存在しない。」
*帰趣(きしゅ):心のよりどころ。帰依すべき安らぎの境地。


🔍 逐語訳(逐語・一文ずつ訳)

  1. 「かれは、恥じることもなく、愧じることもなく、誓戒をまもることもなく、怒りたける」
     怒りに取りつかれた人は、恥じることも自省することもなく、道徳や約束を破って激しく怒り狂う。
  2. 「怒りに襲われた者には、たよりとすべきいかなる帰趣もこの世に存在しない」
     怒りに心を支配された者は、安らげる場所も、よりどころも、救いも得られない。

🧩 用語解説

  • 恥(はじ)・愧(は):他者の目・自らの良心に照らして誤りを恥じる心。仏教では「慚・愧(ざん・ぎ)」として善行の根本とされる。
  • 誓戒(せいかい):仏教徒が守るべき道徳的・宗教的な誓い。五戒・十戒など。
  • 怒りたける:激しく怒り狂うさま。判断力を完全に失った状態。
  • 帰趣(きしゅ):心が帰るべきところ。精神的な安定・救済・信仰・拠り所。

📝 全体の現代語訳(まとめ)

怒りに支配された人間は、羞恥心も自責も持たず、道徳や信念を捨てて我を忘れて怒りに没入してしまう。そして、そのような状態にある者には、もうこの世に心の安らぎや拠り所は存在しない。怒りは人間としての中心を失わせ、魂を漂流させるのである。


💡 解釈と現代的意義

この詩句は、怒りが人間の「良心」「信念」「理性」といった内なる柱を根こそぎ破壊してしまう恐ろしさを警告しています。怒りの中では、普段なら守るべきルールや道徳心も無視され、「誰にも止められない暴走状態」に陥る。怒りはただの感情ではなく、「帰る場所を見失わせる力」なのです。

現代人もまた、SNSや会議、家庭内などで怒りに駆られる瞬間があります。そのとき、何かを守っているようでいて、実は「最も大切なもの=信頼、尊厳、理性」を失っていることに気づく必要があります。


🏢 ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
倫理観と怒り怒りに任せてルールやコンプライアンスを破ると、一時的な正義感のつもりでも信頼を失う結果になる。
マネジメントと自制怒りに流される上司は、部下にとって「帰趣」になりえず、組織に不安と萎縮をもたらす。信頼の軸となるには自制が不可欠。
危機対応と判断力怒りの中では、冷静な状況判断ができず、顧客対応や経営判断を誤る恐れがある。感情の制御は危機管理力でもある。
自分の価値の保持怒りは瞬間的な力だが、それによって「恥」や「誓い」を失えば、自分の価値そのものを傷つける結果になる。怒りを超える姿勢が尊敬を生む。

🧠 心得まとめ

「怒りにとらわれし者、心の帰る場所を失う」

怒りは、人としての軸や拠り所を崩し、道徳をも見失わせる。信頼も、尊厳も、誓いも、怒りの炎に焼かれてしまう。だからこそ私たちは、怒りをコントロールし、理性と誠実さに立ち返る習慣を持つべきである。それが、自他にとって「帰趣」となり得る心のあり方である。


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