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■引用原文(日本語訳)
愚かな者に念慮が生じても、ついにかれには不利なことになってしまう。
その念慮はかれの好運を滅ぼし、かれの頭を打ち砕く。
——『ダンマパダ』第5章 第72偈
■逐語訳
- 愚かな者に念慮が生じても:智慧を持たない者が何かを考えたり計画を立てたりしても、
- ついにかれには不利なことになってしまう:結果としては損失や失敗、自滅に至る。
- その念慮はかれの好運を滅ぼし:もともとあった僥倖や有利な状況さえ台無しにしてしまい、
- かれの頭を打ち砕く:最終的には自己破壊の原因となる。
■用語解説
- 愚かな者(バーラ):真理・因果を知らず、自我と欲望に支配された人。
- 念慮(チンタ):思考・熟慮・計画を意味する。ここでは“考えることそのもの”ではなく、“方向を誤った思考”を指す。
- 好運(バガヤ):元々持っていた運・才能・周囲の好意・有利な状況など。
- 頭を打ち砕く:比喩的に「自滅を招く」「破滅に至る」こと。精神的破綻や致命的失敗の象徴。
■全体の現代語訳(まとめ)
愚かで智慧に欠けた者が、どんなに考え、思案し、計画を立てたとしても、
それは結局、自らにとって不利益な結果を招いてしまう。
彼の思慮は、本来持っていた幸運さえも損ない、
ついには自らを破滅へと導いてしまうのである。
■解釈と現代的意義
この偈は、「思考」そのものよりも、“思考を導く智慧の有無”が重要であることを示しています。
考えること自体は善でも悪でもなく、
**「何を基準に考えるか」「何に基づいて判断するか」**が運命を分けるのです。
愚かな者の思慮は、欲望・猜疑・慢心・焦りなどに根差しており、
たとえ一見論理的に見えても、結果的には自滅の道へと向かってしまいます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
経営判断 | 自我・虚栄・損得勘定にとらわれた思考は、一時的に合理的に見えても、長期的には企業文化や信頼を崩壊させる。 |
リスク判断 | 短絡的な思慮、偏った情報に基づいた判断は、「熟慮」のように見えても破滅を招く。 |
人材登用 | 人格的に未熟な人に判断や戦略を任せると、組織の強みまで破壊してしまう危険がある。 |
キャリア選択 | 一時の欲望(年収・肩書き)に従って決めた選択が、自己崩壊や燃え尽き症候群を招くこともある。 |
■心得まとめ
「賢く考えることと、愚かに考えることは、まったく違う」
考えることは善ではない。
**「どのような心で考えているか」**こそが、運命を分ける鍵である。
自分の思考の土台が欲望や不安で汚れていないか。
それを見つめ直すことが、真の成功と平安への第一歩である。
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