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会社の中に自由はない

お客様の要求について少し考えてみる。お客様は相手の会社の内部事情を調べた上で、それに合わせた要求を出すわけではない。むしろ、相手の状況など一切気にせず、自分の要望だけを一方的に押し付けてくるものだ。

だから、お客様の要求と自社の事情が一致するはずがない。それでも、「自社の都合でお客様の要求には応えられない」とは口にできない。そんなことを言えば、お客様は離れていってしまうからだ。

つまり、会社には自社の都合を主張する自由など存在しないということだ。どんな事情があろうと、お客様の要求に合わせることが求められる。それが企業として避けられない現実なのだ。

この現実を理解していない会社があまりにも多い。製造部門の都合だけで生産計画を立て、その結果として営業部門にしわ寄せを押しつけている企業は数えきれないほど存在する。それが、自らの首を自ら締める自殺行為だということに、社長自身が気づいていないのだ。

お客様の要求と食い違う自社の事情を、どうすればお客様の要求に合わせて変えていけるか。それこそが、会社人が真剣に考えるべき課題だ。社内で何がどうなっていようと、それらの事情は顧みるべきではない。お客様の要求を満たすことこそが、会社の存在意義であり役目なのだ。

さらに厄介なのは、大勢のお客様がそれぞれ独自の要求を突きつけてくることだ。その一つ一つに応えようとすれば、混乱が生じるのは避けられない。むしろ、混乱するのが当たり前なのだ。

お客様の要求を満たそうとする以上、混乱を避けることなど最初から不可能な話だ。むしろ、その混乱が要求を満たすためのものである限り、決して避けてはならない。それは、企業が果たすべき使命の一部なのだ。

ところが、「混乱は悪だ」という固定観念にとらわれ、混乱を避けることを優先してお客様の要求を無視してしまう会社が後を絶たない。その結果、知らず知らずのうちに自社の業績を落としているケースが実に多いのだ。

あるとき、K社が試作用の原料を約10キログラムほどA社に注文したところ、「300キログラムの梱包を崩すことはできない」と断られた。仕方なく、K社は同じ原料をS社に注文することになった。

S社はこの注文に応じ、その結果、この原料を使用した製品が製品化された際には、S社は毎月数百万円の売上を手にすることになった。一方、A社はそのチャンスを逃してしまった。この結果の責任は明らかであり、最終的には社長の判断ミスに帰するべきだと言える。

お客様のもとへ足を運ばないから、こうした現実を理解できないのだ。業績不振の原因が社長にあると言われても仕方がない。「お客様の要求を満たす」ということは、手間がかかり、効率が悪く、経費もかさむ厄介な仕事だ。しかし、それを避けることは、結果として自社の成長を妨げるだけでなく、信頼を失うことにもつながる。

この点を肝に銘じ、社内の事情や効率の悪さといったことは一切忘れ、ただひたすらお客様の要求に応えることだけを最優先に行動するべきだ。それが結果的には、お客様の大きな信頼となって自社に返ってくる。そして、その信頼こそが、将来的に安定した収益を永続的に確保する原動力となるのだ。

個々のサービスが面倒で非効率であろうと、あるいは社内手続きの都合がどうであろうと、それを理由にお客様サービスを怠ることは絶対に許されない。会社というものは、お客様の要求をすべて受け止め、それに応えるために存在している。我社の自由など微塵もなく、すべてはお客様の期待を満たすためにあるのだ。

会社というものは、面倒で効率が悪く、経費のかかるサービスであっても、それを提供しなければならない宿命を持つ。それこそが、激しい競争を勝ち抜き、生き残るための唯一の道である。この事実を、社長は何百回でも何千回でも社員に伝え、強調し続けなければならない。そして、単なる言葉だけではなく、実践を通じてその姿勢を示し、社員一人ひとりにその重要性を徹底させることが求められる。

会社の中に自由はない:お客様の要求こそがすべて

企業は、お客様のニーズに応えるために存在し、自己都合や内部の事情を優先する自由は持たない。お客様は、自らの必要に基づいて一方的に要求を出し、企業がその要求に応えられないと感じた場合、簡単に離れてしまう。従って、企業は自己都合に基づく決断を避け、顧客のニーズに最大限適応する努力を惜しんではならない。

自社都合による判断が招く危険

多くの企業が製造や経理の都合から営業の活動を制限し、お客様の要求をないがしろにするケースがある。このような自社都合の優先は、自社の首を絞める結果となり、最終的には顧客の信頼を失い、売上や業績の低迷に繋がる。K社の例のように、小規模な試験発注に応えられなかったA社は、後に発生した大口の取引チャンスを逃してしまった。こうした状況に気づかないのは、顧客と直接接する機会を欠いた経営者の責任である。

混乱を受け入れる覚悟

複数のお客様がそれぞれ異なる要求を突きつけてくる中、企業は必然的に混乱する。しかし、この混乱はお客様のためである限り、避けるべきではなく、むしろ受け入れるべきである。お客様のニーズを満たすためには、効率や能率を度外視しても応じるべきであり、その一見非効率な対応が長期的には顧客からの大きな信頼に繋がり、安定した収益をもたらす。

自由なき中での企業の役割

企業が競争に勝ち抜き、生き残るための唯一の道は、顧客への徹底的な奉仕と信頼の積み重ねにある。顧客の要求を最優先に考え、自己都合の自由を放棄する姿勢を社長は社員に繰り返し伝えなければならない。企業活動においては、顧客への応対こそが真の価値であり、それを怠る自由は企業に許されないのである。

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