MENU

企業の内部に成果はない

企業は多種多様な人々の集まりで構成されている。その個々の人間をどのように動かすかによって、企業の成果は大きく変動する。しかし、この課題は非常に複雑であり、経営者の意図通りに人々が行動してくれるわけではない。

その結果、経営学と呼ばれる学問は、本来「事業とは市場活動であり、市場には顧客と競争相手が存在する」という基本を見失った。そして、企業内部の「人と仕事」の管理にのみ注目し、それを効率よく行えば企業が成長するという、完全に誤った考えを経営者に吹き込むようになってしまった。

その理論は、事業経営の実態を知らない自称専門家たちの観念的な空論に過ぎず、実際の事業運営にはほとんど役に立たない。そもそも顧客や競合相手といった本質的な要素を完全に無視している時点で、その欠陥は明らかだ。さらに、企業内の仕事とは、多様な人々と多様な業務が絡み合い、相互に影響し合う複雑な仕組みの上に成り立っているにもかかわらず、それらを考慮しない単純な「個別論」に終始している。

それに留まらない。この「人と仕事」の管理論は、人間性を正しく理解していないため、これを採用するとかえって人々の行動を間違った方向へ誘導し、結果として仕事の成果を損なうことになる。

伝統的な組織論や人間管理論が犯した最大の過ちは、社長の判断と社員の行動を同時に誤らせた点にある。この二重の誤りは、企業全体の方向性を狂わせる重大な結果をもたらしている。

本書は、上述のような誤った理論による影響を受けた経営者に向けて執筆されたものである。その目的は、「顧客の要求を満たす」ことを中心に据えながら、「人間の集団と個人をどのように導き、成果を最大化していくか」という課題に対する具体的な解答を提示することである。

重要なのは、「人間がどのような状況で、どのような考え方をし、どのような行動をとるのか」を正確に理解することである。この理解なくして、効果的な指導や成果の向上は望めない。

社長自身の経験と本書に示された具体的な事例を比較し、それを自社の状況に当てはめて考えることで、より深い理解が得られるはずだ。この実践的な視点が、経営における新たな洞察をもたらすだろう。

企業の成果は顧客によってもたらされるという基本を見失い、組織の管理や日常業務の円滑化こそが企業発展の鍵だと信じ込んでいる。この根本的な誤りを正すことが最優先の課題である。そうしなければ、本質的に優れた企業を築くことは不可能だからだ。

会社とは、人間という厄介な生き物の集まりだ。そこには、多様な背景を持つ多種多様な人々が存在し、それぞれ年齢、性格、能力が異なる。その結果、感情の食い違いや自己主張の衝突が絶えず起こり、まさにトラブルの絶えない集団となっている。

その集団を率いる社長は、何とかしてこれらのトラブルを解消し、社員が業務に専念できる環境を作りたいと切に願っている。「和」を社是に掲げている会社がこれほど多いのも、そうした社長たちの思いを物語っている。社長に限らず、多くの人が「チームワーク」を理想として口にする。しかし、こうした願望が実現することは、現実にはほとんどない。

社長の最大の悩みがここにある。そのため、なおさら人々をうまく管理しようと懸命に努力することになる。このような状況から、世間で「経営学」と称される学問の中心が、「組織」とその管理に焦点を当てた内部管理論に偏ってしまったのだろう。

その結果、社長をはじめ多くの人々が、組織の管理やチームワークの向上こそが社長の最も重要な役割であるという、完全に誤った認識に陥ってしまった。そして、社長は毎日会社に出勤し、ひたすら組織の管理と運営に精を出すべきだと説く書物が世に溢れているのも、こうした背景によるものである。

その結果、多くの社長が会社の内部管理だけに意識を集中し、内向きの視点に囚われてしまっている。しかも、内部管理は社長にとって最も取り組みやすく、負担の少ない仕事であるため、いつの間にかそれに没頭してしまうのだ。

まさに証拠が示す通り、怠慢な社長たちは、私がどれほど「お客様のところへ行け」と勧めても、なかなか足を運ぼうとしない。仮に行ったとしても、すぐにやめてしまう。この現状は恐ろしいと言わざるを得ない。社長の本来の仕事は「事業の経営」であり、会社内部の管理に時間を費やすことではないのだ。

事業とは、顧客を生み出す活動そのものである。顧客の要求を満たし、新たな顧客を生み出すことで初めて成果が得られる。会社の内部に目を向けてみても、そこには「費用」しか存在せず、どれだけ管理を徹底しようとも成果を生み出すことはできない。

この当たり前のことを、本当の意味で理解していない社長は少なくない。本当に理解しているのであれば、社長が会社の中に閉じこもるはずがない。社長が会社内に居座り続け、お客様に目を向けないために、顧客の要求が変化していることにも気づけない。その結果、会社は顧客のニーズと乖離した方向に進んでしまい、最終的には業績不振に陥ることになるのだ。

事業とは、お客様の要求を満たすことそのものであり、それ以外の何物でもない。この基本認識こそ、社長が最優先で持つべき最も重要な条件だ。言い換えれば、会社はお客様の要求を的確に満たし続けている限り、決して倒れることはないのである。

会社の内部管理に囚われず、顧客と向き合う重要性

企業の中でどれだけ管理体制を整えたとしても、真の成果はそこにはない。会社という組織は、異なる背景や能力を持つ人々の集団であり、日々感情や自己主張のぶつかり合いからトラブルが生じる。社長や経営陣がそれを何とかまとめ上げ、社業をスムーズに進めたいと願うのは当然だ。しかし、多くの企業が掲げる「チームワーク」や「和」を実現すること自体、実は非常に難しい課題であり、そのため多くの経営者が内部管理に集中しがちだ。

現実には、「経営」とは組織管理ではなく、お客様を生み出し、彼らのニーズを満たすことにある。企業が内部管理に目を奪われると、顧客の声が聞こえにくくなり、ニーズの変化を見落としがちだ。社長が会社内部に閉じこもり、外に目を向けない状況では、企業は成長の機会を逃し、顧客の求める方向とは異なる道を進むことになってしまう。経営者に求められるのは、内部管理を越えて顧客と向き合い続け、彼らの要望を満たすことによってビジネスの成果を生むことなのだ。

もし社長が真の「事業経営」を行いたいと考えるなら、顧客のもとへ足を運び、直接の声を聞くべきである。お客様のニーズを把握し、企業活動をその要求に応じて進化させることでこそ、企業は強く安定した成長を遂げる。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次