志を立てるは、人生の起点である。
だがその起点を誤れば、
進めば進むほど道を外れ、
やがて後戻りもできぬ地点に至る。
ゆえに、立志の当初こそ、最も慎重なる思慮を要する。
熱き情熱を否定するものではない。
しかし、熱心と冷静は常に対をなすものでなければならぬ。
まず、己の心を鎮めよ。
焦らず、急がず、浮かれず、
静かに己の頭脳を澄ませてみよ。
そして、自らの長所と短所とを明らかにせよ。
勢いだけで進むのではなく、
自分という素材を、正確に、厳しく観察せよ。
長ずるところにこそ、志を定めるべきである。
ただし、それがどれほど高邁な志であっても、
己の置かれた境遇が、いまそれを許すか否かを見誤ってはならぬ。
意志の大なるがゆえに現実を蔑ろにすれば、
やがてその志すらも誤ることになる。
大志と小志と、夢と日常とは、常に調和せねばならぬ。
一方は天を仰ぎ、
一方は地を踏む。
その両方が揃ってこそ、人は確かに歩める。
志を立てるとは、
夢を描くだけではなく、
その夢が歩める道であるかを見極める、
静かなる智の行為である。
立志の当初最も慎重に意を用うるの必要がある。その工夫としてはまず自己の頭脳を冷静にし、しかる後、自分の長所とするところ、短所とするところを精細に比較考察し、その最も長ずる所に向って志を定めるがよい。またそれと同時に、自分の境遇がその志を遂ぐることを許すや否やを深く考慮することも必要……大なる立志と小さい立志と矛盾するようなことがあってはならぬ。この両者は常に調和し一致するを要する
コメント