■引用原文(日本語訳)
聖バガヴァットは告げた。
「私は知識の対象を告げよう。それを知れば人が不死(甘露)に達するところの。
それは、無始なる最高ブラフマンである。
それは有とも非有とも言われない。」
(『バガヴァッド・ギーター』第13章 第12節)
■逐語訳
今、私は「知識の対象」――すなわち知るべき真理――を語ろう。
それを理解する者は、不死(アムリタ:甘露)という境地、すなわち死を超えた永遠の平安に到達する。
それは、始まりのない最高存在=ブラフマンである。
この存在は、「在る(有)」とも「無い(非有)」とも定義しがたい。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
知識の対象(ジュネーヤ) | 真に知るべきもの、知識の目的=究極の実在(ブラフマン)。 |
不死(アムリタ) | 肉体的死を超えた精神的な不滅。悟り・解脱・至福の象徴。 |
無始(アナーディ) | 始まりも終わりもない永遠の存在。 |
最高ブラフマン(パラブラフマン) | 万物の根源であり、人格を超えた宇宙的真理。 |
有とも非有とも言われない | 二元的な概念(存在/非存在、形ある/形なき)では把握できない超越的な実在。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、「知識とは手段ではなく、究極の真理に到達するための扉である」と語る。
その真理とは、始まりも終わりもなく、形あるものとも無いものとも言えない、絶対的な存在=ブラフマン。
これを知ることで、人は死を超え、永遠の安らぎ(不死)に至るのだと教えている。
■解釈と現代的意義
この節は、「知る」という行為の究極の目的が、「何をどれだけ知っているか」ではなく、
「知るべきもの――すなわち自他の根底にある実在(ブラフマン)を知ること」であると明示しています。
それは理屈を超えた「在り方の認識」であり、死や不安、自己への執着を超えた視点への入り口でもあります。
■ビジネスにおける解釈と適用
視点 | 解釈と応用例 |
---|---|
目的意識 | スキルや知識は手段であり、本当の問いは「何のために知るのか」である。 |
持続可能性 | 変わりゆく現象(利益・地位)ではなく、変わらない価値(信念・真理)に根ざした働き方が、長期的な安心と不動心をもたらす。 |
哲学的思考 | 「有る/無い」にこだわらず、多様性や曖昧さを受け入れられる柔軟な思考が、変化の時代には不可欠。 |
リーダーの覚悟 | 組織の本質的ビジョンや価値観(形なき真理)を深く理解し、周囲を導ける人物が「不動の核」となる。 |
■心得まとめ
「知るべきは“変わるもの”ではなく、“変わらぬもの”である」
『バガヴァッド・ギーター』は、「知識」とは単なる情報の蓄積ではなく、「永遠なるもの(ブラフマン)を知る智慧」であると説いています。
それを知ることで、人は死や不安、苦しみから自由になる――この教えは、現代に生きる私たちに「ぶれない軸を持て」と語りかけているのです。
知識を積むだけでなく、「知識の目的」を忘れない。それが真に価値ある学びと生き方を導くのです。
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