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根を正せば、幹はおのずから立つ


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■引用原文(書き下し文付き)

原文:
自天子以至於庶人、壱是皆以脩身為本。
基本乱而末治者否矣。
其所厚者薄、而其所薄者厚、未之有也。
此謂知本、此謂知之至也。

書き下し文:
天子より以て庶人に至るまで、壱に是れ皆身を脩むるを以て本と為す。
その本乱れて末治まる者は否ず。
その厚かる所き者薄くして、その薄かる所き者厚きは、未だこれ有らざるなり。
此れを本を知ると謂い、此れを知の至まりと謂うなり。

(『礼記』大学 第一章 第三節)


■逐語訳(一文ずつ)

  1. 天子から庶民に至るまで、誰もが一様に「自らの身を修めること」を根本とする。
  2. その根本(修身)が乱れていて、末端(国や社会)がうまく治まることはない。
  3. 本来大切にすべきことを軽んじ、軽んじてよいことを重んじるというのは、未だかつてない。
  4. このように本を知ることを「知本」といい、これを「知の極致(知の完成)」と呼ぶ。

■用語解説

  • 脩身(修身):自己の内面を鍛え、言行一致の人間になること。徳育の基本。
  • 本末:根本と末端。原因と結果、内と外、源流と派生。
  • 厚薄:重要視すべき(厚)ことと、軽視してもよい(薄)こと。
  • 知本:何を根本とすべきかを理解する知識。
  • 知之至:知の到達点。物事の本質と根源をわきまえた智恵のこと。

■全体の現代語訳(まとめ)

天子のような高位の者から、一般庶民に至るまで、身を修めることがすべての出発点である。
自己を正さずにして、国家や社会が整うことはない。
本来重視すべきことをおろそかにして、二次的なことばかり立派にしても、それは成り立たない。
このように「何が根本であるか」を理解することを「本を知る」といい、それをこそ「知の極致」とするのである。


■解釈と現代的意義

この章は、すべての社会的秩序・組織的安定は、個人の「修身」すなわち自己修養から始まることを明示しています。
個人の行動や倫理が乱れていて、家庭や国家、組織が健全であり続けることはあり得ないという、厳しくも普遍的な真理が語られています。

現代社会では、結果や成果ばかりが重視されがちですが、「どこに最も力を注ぐべきか(本を知る)」という原点への問い直しが、真の成長と安定を導きます。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
リーダーシップの本質地位や役職にかかわらず、「まず自分を律する」姿勢がなければ、チームは整わない。
組織改革の順序組織の文化改革や業績改善を目指すなら、まず経営者自身が「修身」に徹するべき。行動規範が社内に浸透する起点となる。
本末転倒の警鐘売上や成果を追い求めるあまり、倫理や顧客視点を軽視するような状況は長続きしない。根本への立ち返りが必要。
教育・育成「知の極致」とは知識の量ではなく、根本を知る洞察力。人材育成においては、まず“本”を伝える教育が不可欠。

■心得まとめ(ビジネス指針)

「身を正すことが、組織を正す唯一の道」

組織も国も人間も、すべては「己を正す」ことから始まる。根本を見誤り、末ばかりを飾る者に、真の安定や繁栄は訪れない。己の本を知る者こそ、真に知を極めた者である。


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