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捨て方にも道がある──三つの捨離の道


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■引用原文(日本語訳)

「アルジュナよ、その捨離(放擲)に関する私の結論を聞け。実に捨離は〔要素に応じて〕三種であると説かれる。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第4節)


■逐語訳

アルジュナよ、捨離(放擲)についての最終的な私の判断を聞くがよい。
実際、捨離(ティヤーガ)は性質(グナ)に基づいて三つに分類されると説かれている。


■用語解説

  • 捨離(ティヤーガ):行為の結果や執着、または行為そのものの一部を手放すこと。ただし、行為をすべてやめるのではなく、心の持ち方に重きがある。
  • 三種(トリヴィダ):サットヴァ(純質)・ラジャス(激質)・タマス(暗質)の三つの性質(グナ)に応じた分類。
  • 性質に応じて(グナタハ):インド哲学における人間や行動を特徴づける三つの傾向性に基づいて分けられる。

■全体の現代語訳(まとめ)

クリシュナは、これまで述べられてきた「放棄」と「手放し」の議論について、自らの結論を語り始める。
その中で、「捨離」にも種類があり、すべてが等しいわけではないと断言する。
捨てることの動機・態度・理解の度合いによって、三種類の捨離が存在するのだという。これは行動だけでなく、「心の成熟度」そのものを測る基準ともなる。


■解釈と現代的意義

何かを「手放す」「やめる」とき、その行為自体が正しいかどうかだけでなく、「どういう心でそれを行っているか」が問われるということです。
例えば、責任放棄としての退職と、成長のための挑戦としての退職は、同じ「やめる」でも意味がまったく異なります。
この節は、「行為の捨て方」にも質的な違いがあることを認識し、次なる指針(第5節以降)への導入として重要な役割を果たしています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
退職・転職の決断感情に流されて職を辞するのは「タマス的捨離」、成果だけを求めて切り替えるのは「ラジャス的捨離」、内省と使命感に基づく選択なら「サットヴァ的捨離」。
業務の引き継ぎや手放し自分に執着して抱え込むのではなく、相手と組織の成長を願って手放すことが、成熟したリーダーの捨離。
意思決定捨てる・やめる・断つ行為の背後にある「意図」が、組織にとっても自身にとっても最も重要な要素となる。

■心得まとめ

「捨て方には品格がある」
何を捨てたかより、どのように、何のために捨てたかが問われる。
『バガヴァッド・ギーター』は、捨離の三種を通じて「内面的成熟」こそが人生の質を決めると教えてくれる。
真に価値ある手放しとは、逃避でも利己でもなく、理解と調和に基づく行為である。


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