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愛着を離れ、害意を滅して、苦悩は静まる


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■引用原文(日本語訳)

愛好するものから心を遠ざけるならば、これはバラモンにとって非常に優れたことだ。
害する意がやんだとき、苦悩もまた静まる。

(『ダンマパダ』第390偈|第二六章「バラモン」)


■逐語訳

  • Yena yena hi maññanti:人々が「これがよい」と思って執着するものごとに
  • Tato taṃ vinodaye:その対象から心を遠ざけよ(手放せ)
  • Tañhi tassa hitaṃ hoti:それこそがその人(バラモン)にとっての利益である
  • Sabbasaṅgo virajjatī:あらゆる執着が薄れるとき
  • Dukkhaṃ tadanupassatī:それに伴って、苦しみも静まる

■用語解説

  • 愛好するもの(maññanti):快楽・所有・人間関係・地位・意見など、自我が好むあらゆる対象。
  • 心を遠ざける(vinodaye):欲望から意識的に距離を置くこと。抑圧ではなく、理解と放下による離脱。
  • 害意(sabbasaṅga):直接の暴力だけでなく、嫉妬・怒り・優越感なども含まれる心の加害性。
  • 苦悩(dukkha):仏教で説かれる根本的な「満たされなさ」「心の不自由」。
  • 静まる(virajjatī / tadanupassatī):心の平安が訪れること。涅槃への接近。

■全体の現代語訳(まとめ)

執着してしまう対象――快楽・所有・評価・人間関係など――から意識的に心を引き離すことは、精神的完成者(バラモン)にとって極めて優れた行いである。
さらに、人を傷つけたいという思い(害意)が消えたとき、その人の心には深い静けさが訪れ、苦しみも自然と消えていく。これは「手放し」によってのみ到達できる自由の境地である。


■解釈と現代的意義

この偈文は、「執着」と「害意」という2つの根深い煩悩を手放すことで、苦しみから解放されることを説いています。
私たちは日々、「これが欲しい」「あの人に勝ちたい」「あれは許せない」といった思いに囚われて生きていますが、それらが心を重たくし、苦悩の原因となっています。
本当に自由な心とは、「欲しい」から離れ、「敵視」から解放された状態にあります。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
執着のマネジメント役職、報酬、成果に過剰に執着せず、「今なすべきこと」に集中する姿勢がパフォーマンスを安定させる。
怒りや競争心の手放しチーム内での対立や嫉妬心を手放し、「共に成長する関係性」を築くことで、生産性と信頼が高まる。
ストレスとメンタルの安定執着と害意を減らすことで、感情の浮き沈みが少なくなり、長期的な心の健康が守られる。
リーダーの品格利益や成果を超えた視座で行動できるリーダーは、組織の安定と文化の基盤となる。

■心得まとめ

「欲せず、怒らず――その先にある静けさ」
心が求めてやまないものを、そっと手放す勇気。
誰かを責める心を、静かに見つめて溶かす力。
その二つが備わったとき、私たちは本当の意味で自由になる。
ビジネスの現場でも、執着や競争心にとらわれず、自分の中心に安らぎを持つ人こそ、周囲に信頼と調和をもたらす存在となるのです。


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