目次
■引用原文(日本語訳)
二一
(友となって)同情してくれる愚者よりも、敵である賢者のほうがすぐれている。
同情してくれる愚者は、(悪いことを教えて)ひとを地獄にひきずり下す。
――『ダンマパダ』
■逐語訳(意訳を含む)
- 表面的に友のように見え、同情や優しさを示してくる愚かな者よりも、
- たとえ敵のように厳しく接してくる賢者の方が、はるかに価値がある。
- なぜなら、愚者の同情は、真理や善を見失わせ、
- 結果として相手を破滅(地獄)へと導いてしまうからである。
■用語解説
- 同情してくれる愚者(アンダ・ミットラ):情に流されて善悪の区別がつかず、誤った言動を容認する未熟な者。
- 敵である賢者(パンダ・アリ):たとえ厳しい姿勢で接しても、真理に基づいて相手の成長や救済を願う者。
- 地獄(ナラカ):仏教における最悪の転生先、比喩的には苦しみ・破滅・堕落の極地。
- 引きずり下す(アーヴァクラマティ):自分も知らぬうちに、他者を堕落させるほどの影響を及ぼすこと。
■全体の現代語訳(まとめ)
表面的な優しさや共感を見せてくれる愚者は、一見「味方」のように見えるが、真理に背く助言や誤った慰めで人を堕落させてしまう。
一方で、厳しい言葉をかけてくる賢者は、たとえ敵のように見えても、相手の本当の成長と救いを願っており、最終的に人を善き道に導く。
だからこそ、「自分に心地よい人」ではなく、「自分を正しく導く人」を友とせよ。
■解釈と現代的意義
この章句は、現代社会においても極めて重要なメッセージを含んでいます。
現代では、「優しさ」や「共感」が絶対的な価値とされがちですが、それが“真理”や“正しさ”を損なっていては本末転倒です。
本当の友とは、「耳に痛いことでも正しく指摘してくれる人」であり、「間違いをただす覚悟を持っている人」です。
逆に、心地よい言葉ばかりかけてくれる者が、あなたを破滅の道へと“優しく”導いてしまうこともあるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
フィードバック文化 | 本音で指摘してくれる同僚や上司は貴重な存在。甘い言葉ばかりの関係は組織を弱体化させる。 |
人間関係の質 | 自分をヨイショしてくれる人よりも、時に厳しいが本気で成長を望んでくれる人を周囲に置くべき。 |
リーダーシップ | 真のリーダーは人気取りではなく、部下のために時に「嫌われる勇気」を持って厳しい決断を下す人。 |
教育・指導 | 褒めるだけの指導は一時的な安心を与えるが、間違いを正す指導こそが人を育てる。 |
■心得まとめ(感興のことば)
「やさしさは時に、真理を遠ざける」
真の友は、真理を語る者。
たとえ敵のように見えても、それが己を目覚めさせてくれる言葉ならば、感謝すべきである。
優しさだけでは救えない。厳しさの中にある本当の愛に、耳を澄ませよう。
この章句は、「人間関係における本質的な選び方」を教えてくれるものです。
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