目次
■引用原文(日本語訳)
しかも、万物は私のうちに存しない。
見よ、私の神的なヨーガを。
私の本性は万物を支え、万物を実現するが、
万物のうちには存しない。
(『バガヴァッド・ギーター』第9章 第5節)
■逐語訳(一文ずつ訳す)
- しかし、それでもなお、万物は私のうちに存在していない。
- 見よ、私の神的なヨーガ(神秘の力)を。
- 私の神性は、万物を保持し、万物を生起させているが、
- 私自身は、それら万物の中には存在していない。
■用語解説
- 私のうちに存しない:神のうちに存在しているようで、実はその存在に囚われないこと。神はすべてを超越している。
- 神的なヨーガ(マイ・ヨーガ・アイーシュヴァラム):神の神秘的な力。すべてを内包し、超越する力の働き。
- 支える(ダーラヤミ):宇宙や生命を維持し、存在を可能にしている根本的な力。
- 実現する(アヴァスタビャ):存在させる、表現する。神の意志によって万物は現れ、活動する。
- 万物のうちには存しない:神は万物を超越しており、個々の現象に束縛されないという意味。
■全体の現代語訳(まとめ)
一見、すべての存在は神の中にあるように思えるが、神はそれらの存在に囚われていない。
むしろ、神は自身の神秘的な力によって、万物を支え、存在させているが、自らは個々の存在に宿ってはいない。
これは、神の「内在」と「超越」という矛盾を統合する教えであり、真の自由と力の在り方を示している。
■解釈と現代的意義
この節は、「関わりながら自由である」という深い精神的姿勢を教えています。
すべてを支え、導いていながら、それに依存せず、染まらず、自由であり続ける――これは、成熟した精神、真のリーダーシップ、そして信仰の核心です。
神のヨーガ(働き)は、形に囚われず、現象に左右されない「静かなる力」そのものです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーの姿勢 | 組織を支え、育てながらも、細部に囚われず自由な視点を保つ。トップは細かく入りすぎず、全体を見渡す力が必要。 |
内なる力の運用 | 成果や他人の評価に執着せず、自らの本質と原則に基づいて淡々と行動する。それが最大の影響力となる。 |
静かなる実行 | 前に出ずとも、背景で支える姿勢が組織やプロジェクトを成り立たせる。力を誇示せずとも真の価値は伝わる。 |
■心得まとめ
「すべてを成すが、何にも染まらぬ」
真の力とは、影響を与えながらも、執着せず、静かに自由であること。
バガヴァーンは、万物を支えながらも、それに囚われず、常に超越して在る。
ビジネスでも人生でも、成果や関係に執着せず、責任を果たしつつ心を自由に保つ――それが成熟した在り方である。
コメント