目次
■引用原文(日本語訳)
「ブラフマンと一体になり、その自己が平安になった人は、悲しまず、期待することもない。彼は万物に対し平等であり、私への最高の信愛を得る。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第54節)
■逐語訳
- ブラフマンと一体になった者(ブラフマ・ブータ)は、
- 自己(アートマン)が完全に平安な状態にある。
- その人は悲しまない(ショーカ)、
- 期待しない(カーンクシャ)。
- すべての存在に対して平等なまなざしを持ち、
- **私(クリシュナ/至高神)への究極の信愛(バクティ)**を得る。
■用語解説
- ブラフマ・ブータ(Brahma-bhūta):ブラフマンと一体化した者。真理と合一し、超越の境地にある存在。
- 平安(プラサンナ):心に波立ちがなく、揺るぎない落ち着き。
- 悲しみ/期待:過去と未来への執着。心の不安定さを生む二つの根。
- 平等性(サマッタ):あらゆる存在を同等に見る、差別なき視点。
- 信愛(パラーム・バクティ):至高神への無条件かつ純粋な愛と献身。
■全体の現代語訳(まとめ)
宇宙の根源ブラフマンと一体となった者は、
もはや悲しみに心を曇らせることも、未来への期待に揺れることもない。
その人は、あらゆるものを平等に見つめ、
至高神への最も純粋な愛――信愛――を得ることになる。
■解釈と現代的意義
この節は、「悟りを得た者の内的な特徴と、その帰結としての神との関係」を描いています。
ブラフマンと一体になった人は、心がすべての波動から解放されており、感情に左右されない平穏の境地に達しています。
これは現代においても、大きな示唆を与えます。
外部の状況に揺れず、過去への後悔や未来への不安から自由でいられる心。
さらに、すべての人を平等に見て、利害を超えた信頼と愛に基づいて関係を築ける人――
それこそが本当に成熟した人間なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
感情コントロール | 過去の失敗に執着せず、将来の不確実性にも不安に巻き込まれない冷静な判断力を持つ。 |
リーダーシップの成熟 | 社員や顧客を区別せずに公平に扱い、感情的に偏らないリーダーは、長期的に組織を安定させる。 |
信頼と信念の軸 | 顧客やパートナーとの関係性において、「損得」ではなく「信頼」に基づいた行動ができる人は、最も強い影響力を持つ。 |
自己統合のマネジメント | 結果に一喜一憂せず、心の軸を保ったまま行動できる人が、環境変化に耐える人材となる。 |
■心得まとめ
「悲しみも期待もなく、すべてを平等に愛するとき、人は真に自由となる」
ギーターは語る――
静けさに満ちた心に、
愛と信頼が自然に宿る。
そのとき、人は宇宙と一つであり、
神と共にある。
この第54節は、「ブラフマ・ブータ」(ブラフマンと一体になった者)が持つ境地と、
そこから自然に生まれる**最高の信愛(パラーム・バクティ)**を明示します。
次の第55節では、その信愛がどのようにして至高神(クリシュナ)と融合するか、
すなわち「バクティによる究極の到達」が語られます。
コメント