目次
📜引用文(第七章 第十)
一〇*
落ち着いて思慮ある人々は、身をつつしみ、ことばをつつしみ、心をつつしむ。
かれらはあらゆることに慎しんでいる。
かれらは不死の境地におもむく。そこに達したならば、悩むことがない。
🔍逐語訳
- 落ち着いて思慮ある人々:感情や衝動に流されず、内省と冷静さをもって行動・判断する人々。
- 身をつつしみ:身体的な行為を清らかに保つ。
- ことばをつつしみ:発言を選び、無用な争いや嘘を避ける。
- 心をつつしむ:心に起こる怒り・欲望・傲慢などに気づき、それを制御する。
- あらゆることに慎しんでいる:三業にとどまらず、生活・食・感覚・判断・価値観など広く徹底している。
- 不死の境地(アマタ・パダ):煩悩・迷い・輪廻を超えた悟り・解脱の境地。
- 悩むことがない:完全なる平安、動じない心の自由。
🧩用語解説
- 三業の統合:身・口・意すべてを調えた生き方が真の仏道。いずれか一つでは不完全。
- 慎しみ(サンヴァラ):パーリ仏典における重要概念。節度、制御、警戒、自覚を伴った態度。
- 落ち着き(サマタ)と洞察(ヴィパッサナー):仏教修行において、平静な集中と深い洞察がともに必要とされる。
🧘♂️全体現代語訳(まとめ)
冷静で思慮深い人々は、身体、言葉、心のすべてにおいて慎みをもって生きている。
彼らは生活のあらゆる局面で慎重かつ正しく振る舞うことで、煩悩を乗り越え、不死の境地へと至る。
そこに至ったとき、もはや苦悩や迷いに囚われることはない。
📖解釈と現代的意義
この節は、「悟りは突然得られるものではなく、日々の慎みの積み重ねによって築かれる」と教えてくれます。
落ち着き、思慮、慎み――これは派手さのない徳目ですが、真に人生を導く力を持つものです。
現代においても、外界に左右されず、言動に節度と静けさを保つ人は、どんな状況にも動じない「心の安全地帯」を築いているといえます。こうした人々こそが、真のリーダーであり、心の自由人です。
💼ビジネスにおける応用
視点 | 適用例 |
---|---|
成熟した人格形成 | 衝動で行動せず、言葉に慎みがあり、心に平静がある人は、どの組織でも信用される柱となる。 |
判断と意思決定の質 | 思慮をもって事態を見つめ、短期利益ではなく長期的・全体的調和を考慮した判断ができる。 |
危機対応能力 | 混乱やトラブルの際でも落ち着いて行動できる人は、組織の不安を鎮める力を持つ。 |
模範的存在 | 率先して慎みと徳を実践する人は、自然と周囲の意識と文化を変えていく。 |
🧭心得まとめ(座右の銘風)
「慎みをもって歩む者に、悩みは訪れない」
言葉を選び、心を整え、行動を節し、
すべてに慎みをもって歩む者は、
荒れた世にあっても波に飲まれず、
静かな岸辺=不死の境地へと至る。
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