F社のもう一つの教訓は、「捨て去る」という決断とは異なる側面から、企業にとって非常に重要な示唆を与えている。
つまり、企業の成果は製品そのものから生まれるものであり、合理的な生産方式から得られるわけではないという点だ。これこそが、経済的価値の創出を使命とする企業にとって、経営の根本原則である。この原則は、企業の規模や業種、業態にかかわらず普遍的に当てはまる。
それにもかかわらず、この根本原則を忘れている企業がどれほど多いかは計り知れない。しかも、それは中小企業に限らず、多くの大企業においても同様だ。
もちろん、どれほど優れた製品であっても、また顧客に喜ばれるものであっても、売り方を誤れば成果にはつながらない。したがって、製品を「造る」という行為は「売る」という行為と切り離せない一体のものだ。だが、この「経済的価値の創造」という平凡だが本質的な真理が、いわゆる経営学と呼ばれる学問においては、あまりにも軽視されているのが現実だ。
先生方の中には「そんなことは言わなくともわかっている」と考える人もいるかもしれない。しかし、「言わなくともわかっている」とされるほど当たり前のことが、実際にはほとんど理解されていないという現実こそ、真正面から見つめなければならない問題なのである。
そのため、「企業の分析」において最も重要なのは財務分析だが、「わが社の分析」において最も重要なのは、まさに「製品分析」である。
企業分析の目的は、銀行や投資家が企業の優劣を判定することにあるため、財務比率の分析が重要となる。しかし、これを自社に対して行っても、得られるのは抽象的な示唆に過ぎず、具体的な「意思決定のための情報」は得られない。
どれほど優秀な社員が揃っていようとも、どんなに懸命に努力を重ねようとも、収益性の低い製品を作り続ける限り、優れた成果を出すことは不可能だ。
付け加えるなら、伝統的な原価計算では製品の収益性を正確に判断することはできない。この点についての詳しい議論は「社長学第五巻」に委ねる。
F社の事例が示すもう一つの重要な教訓は、「企業の成果は製品から生まれる」という根本原則です。どんなに合理的な生産方式を導入しても、製品そのものに収益力がなければ、企業の成長は見込めません。この単純でありながら普遍的な原則は、企業の規模や業種に関係なくあてはまります。
多くの企業が、特に中小企業だけでなく大企業でさえも、この根本原則を忘れがちである現実があります。製品が持つ価値に目を向けることなく、ただ生産効率や内部の合理化にばかり専念してしまうと、成果は得られません。いかに優れた生産技術や効率的な管理体制を導入したとしても、収益性の悪い製品を作り続ける限り、企業の成果は向上しないのです。
経営者にとっては、まず自社製品の収益性を分析し、収益性の低い製品を思い切って捨て、新たに収益性の高い製品を加えていくことが必須です。財務分析ももちろん大事ですが、経営の具体的な意思決定に結びつけるには、「製品分析」による収益性の見極めが不可欠です。
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