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■原文(出典:『ダンマパダ』第十七章 第十二偈)
大地のように汚されることがなく、
門のしまりのように動揺することなく、
(深い)湖に汚れた泥がないように、
そのような境地にある人──
実に、諸の賢者は汚濁を離れている。
■逐語訳
- 大地のように汚されることがなく:どんなに踏みつけられ、汚されようとも、大地はそれを受け入れて動じない。
- 門のしまりのように動揺することなく:門がぴたりと閉まるように、心が動揺することなく安定している。
- 深い湖に汚れた泥がないように:澄んだ湖の水が静かで濁らないように、心が清らかである。
- そのような境地にある人:この三つの比喩のような状態に達した人は、
- 賢者は汚濁を離れている:煩悩や妄念に染まることなく、清らかな存在である。
■用語解説
- 大地:すべてを受け入れても動じない包容力・安定の象徴。
- 門のしまり(戸の閂):完全に閉ざされた動揺なき心。感情的動揺のない理性的状態。
- 深い湖の清らかさ:濁らず静かな内面。感情や欲望の乱れがない心の深さ。
- 汚濁:煩悩・妄想・怒り・執着など心を曇らせるもの。
- 賢者(パンディタ):真理を知るだけでなく、実践と境地を体現している者。
■全体の現代語訳(まとめ)
大地がすべてを受け止めても動じないように、
門のしまりがぴたりと揺れずに閉じているように、
澄んだ湖が濁らず静けさを保っているように、
そのような人はもはや煩悩に汚されることがない。
真に賢き者とは、外界に乱されることなく、常に心の清らかさを保っている存在である。
■解釈と現代的意義
この偈は、賢者の三つの特徴――寛容・不動・清浄を象徴的に説いています。
これは「理想の精神的成熟状態」ともいえ、現代においても非常に重要な指針です。
不正や批判にさらされても怒らず、煽られても反応せず、自己の心を静かに澄ませておける。
そのような人格は、どの時代・どの社会においても尊敬を集め、信頼の核心となります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
ストレス耐性と柔軟性 | 他者からの批判や期待に反応的になるのではなく、大地のように「受け入れて動じない」姿勢が、安定したリーダーシップを生む。 |
意思決定の安定性 | 瞬間的な感情に左右されず、門のしまりのように論理的かつ静かな判断ができる人は、組織に安心をもたらす。 |
人格の深み | 表面的な態度ではなく、湖のように深く静かな人柄は、ビジネスの信頼と尊敬を生む基盤になる。 |
アンガーマネジメント | 問題や挑発に対しても心を濁さず、自分を整える習慣を持つ人は、どの場面でも周囲を安心させる存在になる。 |
■心得まとめ
「受けても揺れず、触れても濁らず、静かに在る」
大地のような寛容さ、門のような安定、湖のような澄明。
真に成熟した人とは、内面に静けさと広がりを持ち、外界に左右されない。
ビジネスの現場でも、人生の局面でも、
最強の力とは、静けさに宿るのです。
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