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敵意に染まらず、暴力に流されず、執着を断つ静かな強さ


目次

■引用原文(日本語訳)

敵意ある者たちの中にあって敵意なく、
暴力をふるう者たちの中にあって心おだやかに、
執着する者たちの中にあって執着しない者――
その人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ。

(『ダンマパダ』第406偈|第二六章「バラモン」)


■逐語訳

  • Akkodhena jine kodhaṃ:怒りによってではなく、怒りのない心で怒りを超える
  • Asatthena jine satthaṃ:暴力によってではなく、非暴力によって暴力を制する
  • Anupādāya jine upādānaṃ:執着をもってではなく、執着を離れることによって執着を断つ
  • Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:そのような人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ

■用語解説

  • 敵意なく(akkodhena):怒りや憎しみを心に抱かずにいる状態。
  • 暴力を用いない(asatthena):手段としての暴力・攻撃性を完全に排除した態度。
  • 執着しない(anupādāya):感情・所有・地位・人間関係にとらわれず自由であること。
  • 「…の中にあって…しない」:世間の真っ只中にいながらも、それに染まらず超えているという境地。

■全体の現代語訳(まとめ)

怒る者たちに囲まれながらも、決して怒らない。
暴力や強圧が支配する場にあっても、心の静けさを失わない。
物や地位に執着する人々の中にいながら、自らは一切にとらわれない――
そうした者をこそ、仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。
それは、世間を逃れるのではなく、超えていることの証しである。


■解釈と現代的意義

この偈は、**「社会の中にいながら、社会の病に染まらない」**という、極めて実践的な理想像を描いています。
私たちは日々、怒り・対立・暴言・競争・欲望・執着にさらされています。
しかし、それに「反応する」のではなく、それに「巻き込まれずに在る」ことこそ、真の成熟であると説きます。

この生き方は逃避ではなく、内なる強さと自律によって得られるものです。
外の世界がどうあれ、自分の在り方は選び取ることができる――その自由の実践が、〈バラモン〉という理想です。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
感情の自律・リーダーの徳トラブルや攻撃的な状況においても、冷静・中立・穏やかに対応するリーダーは、周囲の信頼を集める。
非対立的マネジメント攻撃に対して対抗するのではなく、受け止め、変換し、対話へとつなげられるマネージャーは、組織文化を健全に保つ。
ミスや挑発に動じない力不当な批判や揚げ足取りに反応せず、全体最適を見据えた意思決定ができる人は、戦略的価値が高い。
価値観で動く働き方周囲の成功や物欲に影響されず、自分の使命と原理で動ける人は、持続可能で幸福度も高い。

■心得まとめ

「嵐の中で静かに立つ者こそが、真に強い」
怒りに怒りを返さず、暴力に暴力を返さず、
執着の渦の中でも、なお自由で在る。
この生き方は、逃げることではなく、超えること。
社会のただ中にいながら、
「どう生きるか」を選び取る――
それが、静かで揺るがぬ〈バラモン〉の道。
ビジネスにおいても、混沌と騒音の中にいてなお、
穏やかで信頼される存在は、周囲の羅針盤となるのです。

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