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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第28偈)
福徳(善きこと)にも、
禍い(悪しきこと)にも、
心を汚されず、
どちらにも染まらず、
憂いもなく、熱情のように心が揺らぐことなく、
安らかにとどまる人――かれをわれは〈バラモン〉と呼ぶ。
――『ダンマパダ』第33章 第28偈
🔍 逐語訳(意訳)
善い出来事にも、悪い出来事にも、
それによって心が動かされることなく、
憂い(不安や心配)を抱かず、
内なる激情や不満が湧き起こることもなく、
ただ静かに、安らかに在る人――
その人こそ、仏陀が〈バラモン〉と呼ぶ、真の解脱者である。
🧘♂️ 用語解説
- 福徳(プンニャ):善行や運、社会的成功、誉れなど、心を喜ばせる外的要素。
- 禍い(パーパ):災難、失敗、不名誉、批判など、心を苦しめる外的要素。
- 汚されず(アナンガナ):心が染まらず、平静を保つこと。
- 熱(ウーサマ):心の熱情、怒り、欲求、衝動など。
- やすらぎ(サンティ):動揺も、衝動もない静かな境地。解脱の別名でもある。
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
運が良くても、悪くても、
称賛されても、批判されても、
成功しても、失敗しても――
心は静かに揺れず、穏やかで、
憂いや怒り、欲望にむらむらと熱くなることもなく、
すべてを超えたやすらぎの中にいる人。
そのような人を仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、「善悪」「吉凶」「評価」などに影響されない完全な中道的な心のあり方を示します。
多くの人は「良いことは欲しい、悪いことは避けたい」と思いますが、
仏陀はその「二元的な価値判断」そのものを超えることを説いています。
「良いことですら執着の対象になる」――だからこそ、
福にも禍にもとらわれず、「静かな心」を保つことが、最も高貴な生き方とされます。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
成果主義の超越 | 売上が良いと有頂天になり、悪いと落ち込む――そんな波に左右されず、常に冷静な判断を保てる人が、組織の安定に貢献する。 |
外部評価への依存からの脱却 | 称賛や表彰に浮かれず、批判や失敗に沈まず、「なすべきことを粛々と進める」姿勢が真のプロフェッショナリズム。 |
リーダーの安定性 | 組織やチームが不安定なときにこそ、心が揺れないリーダーが求められる。浮き沈みに巻き込まれない強さは信頼を生む。 |
メンタル・レジリエンスの体現 | 状況に一喜一憂せず、内的な「やすらぎ」を土台に持つことで、精神的持続力と回復力が高まる。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「誉れも罰も越えて、ただ静かに在る者が、もっとも強い」
人生は、福と禍の波の連続。
けれど、それに心を動かされない者――
それこそが、ほんとうの意味での勝者である。
仏陀は、善にも悪にもとらわれない静寂の心を持つ人を〈バラモン〉と呼び、
その完成された姿を尊びました。
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