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■引用原文(日本語訳)
知慧ある人は、(なすべきことを)いつも為しつつ、それを断乎として実行せよ。行ないのだらけた出家修行は、多く塵を受ける。
—『ダンマパダ』第11章 第2偈
■逐語訳
- 知慧ある人(paññavā):洞察力と正しい理解を持つ者。
- (なすべきことを)いつも為しつつ(niccaṁ kātabbaṁ):常に為すべきことを行いながら。
- それを断乎として実行せよ(didhavā):力強く、ためらいなく、しっかりと遂行せよ。
- 行ないのだらけた出家修行(kusītabhikkhu):怠惰な比丘(修行者)、行為が緩慢で意志の弱い修道者。
- 多く塵を受ける(pāmādaṁ āpajjati):世俗の汚れ、迷いの塵に染まってしまう。
■用語解説
- 知慧(paññā):仏教における「見識ある判断力」。単なる知識ではなく、正見(正しい理解)から生まれる行動の智慧。
- 出家修行(bhikkhu):この文脈では単に宗教者だけでなく、修行の道を歩むすべての人間を象徴している。
- 塵(kilesa):煩悩・迷妄・俗世の汚れの象徴。精神を曇らせるもの。
■全体の現代語訳(まとめ)
仏陀は、「本当に智慧ある人とは、為すべきことを認識し、しかもそれを日々の中で確実に実行し続ける人である」と説く。逆に、怠け心から修行に手を抜けば、どんなに立派な志を持っていても、心は世俗の塵に汚されてしまうと警告している。
■解釈と現代的意義
この教えは、単なる知識や理想を掲げるだけでは不十分であり、それを「断固として実行する意志」こそが本当の智慧であると明示しています。現代社会では、“知っているけれど行わない”という状態がよくあります。しかし、知識の価値は実行されて初めて現れる――それがこの句の核心です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 現代ビジネスでの適用例 |
---|---|
行動力の伴う知恵 | 分析や思考だけではなく、それを現場で活かして実行する「行動に移す力」が成果を生む。 |
意志の継続性 | 計画を立てただけで満足せず、日々のルーチンでも淡々と“やるべきこと”を積み上げる姿勢が信頼と実力を養う。 |
リーダーシップ | 部下や周囲に教える前に、自らが“為すべきを断固として為す”ことで背中を見せるリーダーに。 |
自己認識 | 「自分はわかっている」と思い込むだけで行動を怠れば、内側から自己が腐敗する。実行こそが自己の磨きとなる。 |
■心得まとめ
「知るだけでは足りぬ。為すべきを、断固として為せ。」
知識を語ることは簡単である。しかし、智慧とは“実行の中で生まれるもの”。仏陀の言葉は、行動を伴わぬ理解が、かえって迷いの元になることを示している。
現代のビジネスにおいても、“知っているけどやらない”ではなく、“知ったら必ず行う”人こそが信頼され、成果を上げる者となる。
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