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■原文(日本語訳)
同行する仲間が少ないのに多くの財を運ばねばならぬ商人が、危険な道を避けるように、また生きたいとねがう人が毒を避けるように、ひとはもろもろの悪を避けよ。
(『ダンマパダ』第九章「悪」第123偈)
■逐語訳(一文ずつ訳)
- 同行する仲間が少ないのに多くの財を運ばねばならぬ商人が、危険な道を避けるように
→ 少人数で大量の財宝を運ぶ商人が、盗賊などの危険を恐れて危険な道を避けるように、 - また生きたいとねがう人が毒を避けるように
→ 命を大切にしたい人が毒を慎重に避けるように、 - ひとはもろもろの悪を避けよ。
→ 人は、害あるものとして悪を避け、決して近づいてはならない。
■用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
同行する仲間が少ない商人 | 守る手段が乏しく、リスクが高い状況のたとえ。 |
多くの財 | 大切なもの、命・徳・信頼・心の清らかさなどの象徴。 |
危険な道 | 盗賊・悪意・過ち・不正に満ちた状況や環境。 |
毒 | 一度取り込めば取り返しがつかない悪行や思考。 |
もろもろの悪(アク) | 憎しみ、嘘、不正、欲望、怠惰、暴力など、心と行為を損なうもの。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえば、少人数で貴重な財産を運ぶ商人は、盗賊が出没する危険な道を避けるように、
あるいは命を大切にしたい人が毒を避けるように、
人は自らを守るために、あらゆる悪からも徹底的に距離を取らなければならない。
悪は“行ってはならぬ道”であり、“取り込んではならぬ毒”なのである。
■解釈と現代的意義
この偈は、「悪に対して積極的に『避ける』姿勢を持て」と警告しています。
悪に染まらないためには、誘惑の場に近づかない・人間関係を選ぶ・自分の弱さを知る――こうした“自己防衛の智慧”が必要です。
また、「自分には関係ない」「少しだけなら」といった油断が、人生の大切な財(信頼・尊厳・心の平安)を奪っていくことも強く示唆しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
テーマ | 応用解説 |
---|---|
倫理的判断力 | 一見利益のある話でも、不正や誤魔化しがあるなら即座に距離を取る判断が必要。 |
自己防衛としての道徳 | 自らの信用・評価・健康を守るためには、悪と関わらない「戦略的無接触」が有効。 |
組織文化の選択 | 悪意や陰口が蔓延する場には自ら近づかない。巻き込まれることで大切なものを失う。 |
部下教育と環境づくり | 若手に対しても「悪から遠ざかる習慣」を意識づけることで、安全で清潔な職場が築かれる。 |
■心得まとめ
「悪に近づくな、それは“毒の道”である」
悪は、触れてからでは遅い。
だからこそ、避ける――これが最も確実な自己防衛であり、生き方の智慧である。
人生の中で守るべき「財(信頼・徳・心の平安)」を持つ者ほど、危険を敏感に察知し、距離を取る勇気を持たねばならない。
避けることは逃げではない。それは、“真の強さ”である。
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