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📖 引用原文(『ダンマパダ』第33章「バラモン」第19偈)
怒ることなく、節度をもち、
戒律を正しく守り、
深い学びを備え、
身をととのえている者。そして、もはや「次の生」はない――つまりこの身体が最後となる者。
その人こそを、私は〈バラモン〉と呼ぶ。
――『ダンマパダ』第33章 第19偈
🔍 逐語訳(意訳)
怒りの感情にとらわれず、
慎みを保ち、戒律を守っている者。
広く学び、知識に満ち、
行い(身体)も清らかに整えられている。
そしてこの生を最後とし、輪廻から完全に離脱した者――
そのような人こそ、真の意味でのバラモンである。
🧘♂️ 用語解説
- 怒ることなく(アコッディ):怒りを抱かず、怒りの衝動を制する精神の成熟。
- つつしみ(サンヤマ):自制、節度、内省的態度。欲望や衝動に流されない姿勢。
- 戒律(シーラ):行動規範。仏教における五戒・十善・比丘律などを指す。
- 博学(バーフー・スッタ):教え(法)を広く学び理解している者。形式的な知識ではなく、真理の洞察を伴う。
- 身をととのえる(ススンタ・カーヤ):行動・姿勢・態度の整い。身体に現れる修養の成果。
- 最後の身体(チャラ・カーヤ):転生(輪廻)を終えた解脱者にとっての「最終の生」を意味する表現。
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
怒りを手放し、節度をもって生き、
戒律を守りながら学びを深め、
行動も清らかに保っている人。
そして輪廻から脱し、もう新たに生まれることのない境地に至った人――
そのような人こそ、仏陀が定める「バラモン」、
すなわち精神の完成者である。
🧭 解釈と現代的意義
この偈は、精神的な成熟に必要な5つの要素を示しています:
- 怒りを制する穏やかさ
- 欲望をコントロールする自制心
- 日々の行動を律する倫理意識(戒)
- 単なる知識ではなく、真理への洞察に基づいた学び(慧)
- それを生活や行動に反映した清浄な身体的実践(定)
現代社会では、怒り・衝動・情報の氾濫の中で、精神的バランスを崩しやすい環境が広がっていますが、この偈は「学びと節制によって、外にも内にも調和を築く人」の尊さを再確認させてくれます。
🏢 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用・実践例 |
---|---|
怒りの感情制御 | 問題発生時に怒りで反応せず、冷静に対処する力がリーダーシップの本質。 |
一貫した行動倫理 | 不正をせず、原理原則に従って判断する姿勢が組織の信頼を支える。 |
学びの深化と実践 | 単に情報を集めるのではなく、深く理解し、現場で活かせる知の活用が重要。 |
内外の整合性 | 考えと行動が一致しており、外見だけでなく態度や姿勢から人格がにじむ人が信頼される。 |
次元の違う成熟 | 実績や立場を超えて「内面の整い」が醸し出す影響力は、最も長く続く本物の力。 |
💡 感興のことば:心得まとめ
「怒りを離れ、学び、整え、解き放たれた人が、最も美しい」
知識や行動の洗練だけでなく、
怒りに揺れず、心身の内外を調和させ、
自分自身から自由になった人こそが、
本当の意味で成熟し、尊敬される存在となる。
仏陀はそのような人に「バラモン」の名を与えた。
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