目次
📜引用文(第七章 第七)
七
生きものを傷けることなく、つねに身体について慎しんでいる聖者たちは、不死の境地におもむく。
そこに至れば悩むことがない。
🔍逐語訳
- 生きものを傷けることなく:殺さず、苦しめず、威圧もせず、すべての命に対して慈しみをもつ。
- 身体について慎しんでいる:欲望や衝動に流されず、身の行いを戒めている状態。
- 聖者たち:修行を重ね、煩悩を離れた、徳の高い人々。
- 不死の境地(アマタ・パダ):生死の輪廻を超えた悟りの境地、涅槃。死によっても破壊されない精神的安寧。
- 悩むことがない:苦しみや迷いを超越した、完全な平安の境地。
🧩用語解説
- 不殺生(アヒンサー):仏教・ジャイナ教・ヒンドゥー教に共通する根本倫理。あらゆる生命を尊重し、傷つけない。
- 慎しみ(自制):仏教では「戒律」や「正念」と関わる。行動の前に気づきと選択を入れる態度。
- アマタ(不死):煩悩・無明・生死の苦しみから解き放たれた解脱の状態。
- 悩まぬ境地:悟り(ニルヴァーナ)によって「苦・集・滅・道」の苦を滅した状態。
🧘♂️全体現代語訳(まとめ)
他の生きものを傷つけることなく、日々の行動に慎みをもって生きる聖者たちは、やがて生死を超えた「不死の境地(悟り)」に至る。その境地に達した者は、もはや悩むことがなく、完全な安らぎの中で生きるのだ。
📖解釈と現代的意義
この節は、慈悲と慎みの実践が、究極の自由(涅槃)につながることを教えています。
現代人にとって「不死」とは、単に死なないことではなく、恐れや苦しみに支配されない心の境地を意味するものです。他者を傷つけない、衝動に流されない、穏やかで自律した生き方が、深い安寧へとつながるのです。
つまりこれは、「力ある者ではなく、優しく慎んだ者こそが、本当の意味で自由である」という哲理なのです。
💼ビジネスにおける応用
視点 | 適用例 |
---|---|
非攻撃的コミュニケーション | 相手を論破するより、傷つけず理解し合う対話が、長期的信頼と共創を築く。 |
倫理的行動 | 利益やスピードを優先して無理やり進めるよりも、誠実で慎重な判断が、組織の信用を守る。 |
セルフマネジメント | 衝動・怒り・欲望に流されない慎みが、冷静なリーダーシップを可能にする。 |
持続的幸福の鍵 | 他人も自分も傷つけない仕事のしかたが、最終的に一番「悩みのない働き方」を実現する。 |
🧭心得まとめ(座右の銘風)
「慎みと慈しみは、不死への道しるべ」
強さとは、支配することではない。
誰も傷つけず、己をも律する者が、
生と死の彼方にある、静けさの岸辺へと至る。
真の幸せとは、静かな心と共に生きることなのだ。
この節は、単なる「行動規範」ではなく、人格の完成と究極の平安を描いたものです。ここまでの一連(第一~第七節)を通じて、悪を捨て、善を実行し、悟りへ至るという、仏教倫理の王道が見えてきます。
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