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形なき理想を追う道は険しい

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■引用原文(日本語訳)

「だが、非顕現なものに専念した人々の労苦はより多大である。というのは、非顕現な帰結は、肉体を有する人々によっては到達され難いから。」
(『バガヴァッド・ギーター』第12章 第5節)

■逐語訳

しかし――
形のないもの(非顕現)に心を注ぐ人々の努力は、より困難である。
なぜならば、そのような(抽象的で無形な)目的地(真理)は、肉体を持った存在にとって、到達しがたいからである。

■用語解説

  • 非顕現(アヴィヤクタ):目に見えず、形を持たない究極的存在。ブラフマンなどの抽象的原理。
  • 専念(アウパーサナー):深く集中し、心を捧げて思い念じること。
  • 労苦(クラティル):精神的・肉体的努力、修行の困難さ。
  • 肉体を有する人々(デハヴァット):人間として生まれ、五感や欲望・限界を持つ存在。
  • 到達され難い(ドゥルラバハ):理解や体験に至ることが極めて困難であるさま。

■全体の現代語訳(まとめ)

形のない絶対的存在(真理)を対象に修行を行う人々の道は、非常に困難である。人間という肉体を持つ存在にとって、そのような抽象的な対象を理解し、完全に一体化することは極めて難しいからである――とクリシュナは述べる。

■解釈と現代的意義

この節は、「抽象的理想を追い求めることの困難さ」を率直に指摘しています。
形のない理想や概念(完全な正義・真理・無限の知)を、ただ頭の中で思い描き、体現しようとすることは、肉体や感情をもつ人間にとって非常に困難です。

ギーターは、「現実の行為や対象(たとえば神への愛や具体的な奉仕)」を通して道を歩む方が、多くの人にとって実践的で効果的だとほのめかしています。

■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
抽象理論の限界理念や戦略だけを追い求め、現場の現実や行動を伴わないと、実効性に欠けて成果が出にくい。
人材育成「理想のリーダー像」だけを教えるのではなく、行動・体験・フィードバックを通じた成長が現実的である。
プロジェクト運営完全な計画を練るより、現実に手を動かして改善し続ける方が、前に進む道として確実である。

■心得まとめ

「理想は遠く、現実に根ざせ」
目に見えぬ完全を追い求めることは尊いが、それだけでは足をすくわれる。
人間として生きる私たちは、まず目の前の行為・現実の関係・日々の選択から始めなければならない。
『ギーター』は、理想の高さだけでなく、それをいかに「現実に根ざして実現するか」の大切さを教えてくれる。

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