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欲を捨ててこそ、向こう岸へ渡れる


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📜引用原文(日本語訳)

第七二偈
大きな激流が極めて弱い葦の堤を壊すように、
貪ぼりをすっかり断ち切ってしまった修行僧は、
こなたの岸を捨て去る。
蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
—『ダンマパダ』第二章 第七二偈


🔍逐語訳と意図

  • 大きな激流:真理・解脱へ向かう強力な力。
  • 葦の堤:煩悩(この場合は「貪欲」)の脆くて儚い障壁。
  • 貪ぼり(ローバ):財・快楽・名誉などを強く欲する心。
  • こなたの岸:生死輪廻の世界(サンサーラ)、欲望と執着の場。
  • 脱皮する蛇:煩悩や執着を脱ぎ捨て、次の次元へと進む象徴。

📚用語解説

用語解説
貪ぼり(ローバ)貪欲。あらゆる欲望に執着する心。五蓋・十結のひとつ。煩悩の中心的な要素。
激流と堤真理の力と、煩悩の象徴的対比。
蛇の脱皮煩悩を手放すことによる精神的再生・新たな段階への到達。

🪞全体の現代語訳(まとめ)

この偈は、貪欲という執着心が、解脱の妨げであることを明示しています。
真理への道は強く流れる激流のようであり、貪欲という脆弱な堤はそれに容易く打ち砕かれる。

真に修行を深めた者は、
この「欲しい」「得たい」「もっと欲する」という欲望そのものを根本から断ち、
この世への執着(こなたの岸)を離れる。

蛇が皮を脱ぎ捨てて軽やかに進むように、
貪欲を脱ぎ去った者は、自由な境地へと渡るのです。


🧠解釈と現代的意義

現代社会において、貪欲は経済成長のエンジンであり、同時に精神的疲弊の根源でもあります。

  • 「もっと儲けたい」「もっと評価されたい」
  • 「他者より優れていたい」「手放したくない」

こうした欲求は自然な感情である一方、
それに支配されると、心の自由を失い、判断も鈍る。

この偈は、「欲望は努力の燃料ではあるが、
それが全てを支配すると、人生の本質から離れてしまう」ことを教えています。


💼ビジネスにおける解釈と適用

観点応用例
マーケティング戦略顧客の欲望を刺激する手法に没入しすぎると、企業も「欲」に飲み込まれる。ブランディングは「与える」視点に戻すべき。
マネジメント欲望による動機づけ(報酬・インセンティブ)に偏りすぎると、組織の倫理や信頼が崩れる。
意思決定利益だけを追い求めると、長期的な関係性や社会的信頼を失う。利益よりも「価値」や「意味」を見据える判断を。
自己管理物欲や承認欲求に振り回されると、本当に大切なことが見えなくなる。定期的に“欲の棚卸し”が必要。

✅心得まとめ

「欲望に従う者は、いつまでも此岸をさまよう。欲望を離れる者は、彼岸に至る」

人生の苦しみの多くは、「もっと欲しい」「今のままでは足りない」という感覚から生まれます。
しかし、その「足りなさ」の正体に気づき、執着を手放したとき、
初めて人は、心からの安らぎと自由を得るのです。


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