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何ものにも縛られず、ただ静かに、回転する者


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📖引用原文(日本語訳)

青い幌をまとい、白い傘で覆われ、輻が一つしかない車が回転して来る。
結びつける紐もなく、軛に結ぶ綱もなく、悩まされることなく、やって来るのを見よ。
――『ダンマパダ』 第二七章「観察」第三十節


🧩逐語訳と解釈

  • 青い幌(ほろ)をまとい:尊貴さと神秘を象徴する装い。伝統的に王者や修行者の衣にも通じる色。
  • 白い傘で覆われ:インド文化では王者や聖者の権威の象徴。「白傘」は「尊厳」「清浄」の象徴でもある。
  • 輻(や)が一つしかない車が回転する:常識を超えた存在。普通では不可能な状態で回る車=真理を得た者、あるいはその在り方の比喩。
  • 結びつける紐もなく:執着や因果の縛りがない。
  • 軛(くびき)に結ぶ綱もなく:牛車を制御するための道具がなく、つまりは強制力なしに動いている状態。
  • 悩まされることなく:心が揺らがない。苦悩のない境地。
  • やって来るのを見よ:解脱者の到来に気づけ、という叡智への呼びかけ。

🧠用語解説

用語解説
インド思想における「自己」「生命」「肉体」の象徴。
輻が一つしかない車一見不安定に見えるが、中心に軸(=真理)があるがゆえに安定して回る存在の比喩。常識を超越した悟りの象徴。
紐や綱のない車執着も制御も必要とせず、自然に調和して動く存在。
白傘・青幌王権や悟りの象徴。「バラモン的清浄」と「菩薩的尊厳」の融合的イメージ。

🪷全体の現代語訳(まとめ)

青い幌をまとい、白い傘に守られて、
ひとつしか輻のない車が静かに回りながらやってくる。

その車には、縛る紐も、引っ張る綱もない。
誰にも悩まされず、妨げられることもない。

それでも、彼はやって来る。
この世を超えた静かな力を宿して。


🌱解釈と現代的意義

この節は、「縛られることなき行動」「支配されない調和」「力まず進む智慧」を象徴的に描いています。

まるで何の力にもよらず、自立的に動き続ける車のように、
悟りに至った者は、煩悩や執着、周囲の影響を受けることなく、
淡々と、しかも着実に、自分の道を進むのです。

世の中の大半は「結びつける綱」や「支える構造」なしには生きていけない。
けれども、真に自由な者は、外的支えを要さずに回転し続ける力=内なる真理を得ている。
その姿は「見えにくい」けれど、「確かにやって来る」と、この節は告げています。


💼ビジネスにおける解釈と適用

観点実務への応用例
真の自律指示や命令がなくても、自らの価値基準で動き続ける人物は組織の核となる。
リーダーのあり方外部の称賛や批判に左右されず、静かに実行し続けるリーダーこそ尊敬される。
内在的モチベーション結びつける「評価」や「報酬」に依らない自律的行動力が、長期的に持続する力になる。
変化の中での安定制御不能な環境下でもブレない軸(ビジョン・原則)を持つことが、車の“輻”となる。

📝心得まとめ

「誰にも縛られず、誰にも妨げられず――
ただ静かに、真理をもって進む者になれ」

解脱者は外から見ると不思議に映る。
綱もない、軛もない、誰も押していない。

けれども、中心には真理という軸があり、
彼は一人で回転して、流れの中を進んでいく。

縛られず、依存せず、それでいて力強く動く――
それが本当の自由であり、本物の強さである。


この第三十節は、第二七章「観察」の詩的クライマックスとして、「自由・自立・智慧」の結晶を提示しています。

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